Q1 高齢者と薬の服用量の関係
Q9 薬の服用時間と生活リズム
Q11 睡眠薬には習慣性がありますか?
Q12 漢方薬には副作用がないんですか?
Q13 目薬をさす順番
Q14 飲食物の薬への影響
Q15 水なしでの薬の服用
Q16 冷感タイプと温感タイプのパップ剤
Q17 添付文書に記載されている注意事項
Q18 家庭の常備薬
高齢になると、臓器の機能が徐々に低下してきますので、分解、排せつがされにくくなり、薬の体内濃度は高くなりがちです。一方、薬に対する反応の強さも変化してきます。こうしたことから、たいていの場合は、一般成人と同じ量を服用すると、効き目が強く現れますし、副作用も現れやすくなります。
医師は、患者さんの年齢や体重、症状の程度に応じて薬の量を加減しています。指定された用法、用量を守って服用しましょう。
薬局や薬店で購入できる一般用医薬品の場合、15歳以上は大人の用量で一律になっていますので、薬剤師によく相談してください。
寝たきりの人に薬を飲ませるときは、必ず上体を起こしてから飲ませるようにしてください。寝たままだとうまく飲み込めないので、薬がのどにつかえてしまい、呼吸ができなくなったり、食道にとまってしまい、その部分が潰瘍(かいよう)を起こすことがあります。高齢者は、飲み込む力が衰えていますから、特に注意が必要です。また、薬を飲む前に口を湿らせておくと、のどの通りがよくなります。
なお、大きな錠剤やカプセル剤などで飲み込めないときは、医師又は薬剤師に相談して、同じ成分の粉薬や水薬があれば、それに変えてもらうようにしましょう。
糖尿病薬を服用している人が気をつけなければならないことは、低血糖症です。低血糖症は、血液中の糖分が少なくなり過ぎたときに起こる状態で、きちんと薬を服用していても、食事を抜いたり、食事の時間が遅れたり、激しい運動の後やお酒の飲みすぎでも起こりやすくなります。
症状は、空腹感、脱力感、発汗、動悸(どうき)、めまい、手足のふるえなどで、軽いうちなら食事をすれば回復しますが、ひどいときには、意識を失ってしまうこともあるので危険です。このような症状が現れたときは、早めに糖分を補っておくことが必要です。
ですから、外出するときは、砂糖やキャンディーを持ち歩き、低血糖症が起きたときは、その場ですぐに食べるようにしましょう。そして、できるだけ速やかに、かかりつけの医師の診察を受けてください。
また、意識を失ったときのために、自分が経口糖尿病薬を飲んでいることや、かかりつけの医療機関名や自分の連絡先を書いた札を身につけておきましょう。
この他にも、薬を飲む時間や量をきちんと守ること、他の病気で別の医師に治療を受ける際や、薬局でかぜ薬や痛み止めを購入するときも経口糖尿病薬を飲んでいることを告げることなどの注意が必要です。
人の尿や血液の中に含まれるタンパク質、酵素、ウイルスなどを測定することにより、病気の診断をする検査薬を体外診断用医薬品といいます。
従来、医療機関などで専門的に取り扱われていましたが、現在では、尿中の糖及びタンパク質の検査薬、妊娠検査薬が薬局、薬店で購入できるようになり、自分自身の健康管理や病気の早期発見に役立てられるようになりました。
しかし、検査結果は補助的なものでひとつの目安ですから、自己判断せず、必ず医師の診断をうけてください。
血圧を下げる降圧剤には、主に血管拡張剤や降圧利尿剤などがあり、これらはしばしば組み合わせて使われます。
降圧剤により血圧が下がると、めまいや脱力感、眠気を伴うことがありますから、車の運転や危険な作業をするときは注意が必要です。
このような症状が現れたときは、医師に相談しましょう。
また、降圧利尿剤は、名前どおり尿量が増えますから、就寝前の服用は避けてください。
いずれにしても、降圧剤は高血圧の原因を治療するものではありませんから、薬の服用を中止するとまた血圧は上がってしまいます。症状を自己判断して、薬を減らしたり、やめたりすると危険です。必ず医師の指示にしたがってください。
かぜ薬などの中に含まれていて、心臓に影響を与える成分には次のようなものがあります。
1 かぜ薬や鎮咳(ちんがい)去たん薬に含まれているもの
2 鎮咳(ちんがい)去たん薬や鼻炎用内服薬に含まれているもの
これらの成分は、血管を収縮させたり心拍数を増加させたりしますから、狭心症など心臓病の人は注意が必要です。また、マオウは、葛根湯(かっこんとう)や小青竜湯(しょうせいりゅうとう)などの漢方薬の中にも含まれていますから同じく注意が必要です。
成分名は、容器や外箱などに記載されていますが、この他にも影響のある成分がありますから、服用前に医師又は薬剤師に相談してください。
複数の診療科から同時に薬が出ている場合、一番注意しなければならないことは、薬の重複です。ご質問の例ですと、痛み止め、炎症止めや抗生物質などが重複する場合が予想されます。全く同じ薬ではなくても、同じような効果の薬が処方されていることもあります。
このように薬が重複した場合、効き目が増強されたり、副作用が起こりやすくなったりします。
また、相性の悪い薬を同時に服用すると効き目が弱くなったり、強くなりすぎたりして、期待した治療効果が得られない場合もあります。
複数の診療科にかかるときは、他の診療科で投薬を受けていることを、それぞれの医師に知らせておくことが必要です。また、これは薬局、薬店で購入した一般用の薬を服用している場合も同じです。
医師の指示どおり服用しないことを、ノンコンプライアンス(服薬の不履行)といい、治療を妨げる大きな要因のひとつになっています。
医師は、患者さんの年齢、体重、病状を総合的に判断して、薬の種類や服用量を決めます。自己判断で薬を服用しなかったり、勝手に量を減らしたりすると、薬の効果が十分発揮されないことはいうまでもありません。
また、このことを医師が知らずにいると、薬の効き目が十分でないと勘違いして、薬の種類を変えたり、薬の量を増やすことになります。服用量が増えると、副作用が現れやすくなりますから、かえって危険です。
指示された薬は、きちんと服用しましょう。もし、何か症状が現れたときは、医師又は薬剤師に相談してください。また、飲み忘れた場合も、その旨を医師に報告しましょう。
治療する側の医師は、治療を受ける側の患者に対して、治療方法に伴い起こりうる危険性や、使用する薬物により現れることが予測される副作用などの情報を十分に説明し、患者の同意を得たうえで治療を行うべきであるという考え方。
近年、医師をはじめとする医療の場において、唱えられ始めました。
食事の時間から多少遅れても、飲み忘れに気がついたらすぐ飲んだ方がよいでしょう。
薬が効果を発揮するためには、体の中で一定以上の濃度が保たれる必要があります。特に、高血圧や糖尿病の薬は、飲み忘れにより急激な症状の変化が現れることがあります。また、抗生物質などは、一定の間隔で服用することが必要とされていますので飲み忘れに注意しましょう。
ただし、食後や食直後に服用するよう指示されている医薬品は、胃を荒らすことがありますので、食後、時間がかなり経過している場合は、軽い食べ物や飲み物をとってから服用してください。
また、次に飲むまでの時間が短かすぎると、薬の濃度が高くなりすぎて、効果が強く現れたり、副作用が現れやすくなったりしますので、最低4時間以上は間隔をあけるようにしましょう。
なお、心配なときは、医師又は薬剤師に相談してください。
朝、昼、夕食後に飲む薬と寝る前に飲む薬が別の薬なら、夕食と寝る時間が近くても服用してもかまいません。
もし、朝、昼、夕食後に飲む薬と寝る前に飲む薬が同じならば、夕食後と寝る前の薬をほぼ同時に服用することになりますから、1回に2倍の量を服用することになってしまいます。
このことは、薬によっては、作用、副作用の両面から好ましくない結果を招くこともあるので、自己判断で2回分をまとめて飲むのはよくありません。
だからといって、長年続けてきた生活リズムは、なかなか変えられるものではありません。薬を飲むためにいつもより遅く寝ることで、かえって体調を崩してしまったのでは何もなりません。
医師に相談して、他の服用方法に変更してもらうとよいでしょう。
服用方法の指示と時間の目安
食前 | 食事の30分ぐらい前 |
食直後 | 食事の後すぐに |
食後 | 食事の後30分までに |
食間 | 食事と食事の間(食事の後2時間から3時間くらい) |
寝る前 | 就寝直前から30分前 |
頓服(とんぷく) | 熱、痛みなど症状があるとき |
薬もアルコールも、そのほとんどが肝臓で分解されます。ですから、飲酒は大なり小なり薬の効き目に影響を与えると考えた方がよいでしょう。
特に、強心薬や糖尿病の薬はアルコールによって分解されにくくなるため、薬の濃度が高くなって中毒症状が現れたり、血糖値が低くなり過ぎたりするので危険です。
また、睡眠薬なども作用が強く現れますから注意してください。
これとは反対に、アルコールの分解に影響を与える薬もあります。
アルコールは分解の途中で、悪酔いや二日酔いの原因になるアセトアルデヒドという物質になります。アルコール依存症の治療薬は、このアセトアルデヒドを分解しにくくすることにより、飲酒を不快にする仕組みになっています。
一部の抗生物質や抗菌剤には、この薬と同じような作用を持つものがあります。そうとは知らずに飲酒すると、悪酔いや二日酔いの症状が現れるので、注意が必要です。
この他にも影響のある薬があります。詳しくは医師又は薬剤師に相談してください。
かつて睡眠薬といえば、連用による習慣性もあり、大量に服用すると生命に危険が及ぶこともありましたが、現在では、習慣性も少なく、副作用の少ない、ベンゾジアゼピン系の薬物が主流を占めるようになってきています。
この系統の薬は、大量に服用しても生命に危険が及ぶことも少なく、これまでのものに比べて、安全性が高いとされています。
しかし、長期間、大量に服用した後中止すると、禁断症状を起こすものもありますし、連用によって精神的依存をきたすので、習慣性医薬品に指定されているものもあります。
習慣性を必要以上に恐れる必要はありませんが、医師の指示にしたがい、薬を正しく服用して早く不眠症を治療し、できるだけ短期間の使用にとどめるように努力することが大切です。
昭和51年に漢方薬が健康保険に適用され、病院や診療所でも投薬されることが多くなってきました。人口の高齢化が進むなか、慢性病や老人性疾患に対する、漢方薬の治療効果が新たに注目されてきています。
漢方薬の作用は、西洋薬に比べて穏やかだとよくいわれます。しかし、漢方薬も医薬品ですから、人体に対する何らかの薬理作用があるから効果が発揮されるのです。
副作用についても同じことがいえます。症状が現れる頻度や程度は、漢方薬の方が比較的低いといえますが、副作用が全くなく、長期間連用しても安全というわけではありません。
たとえば、軽い副作用である発疹やかゆみなどの過敏症状は、ほとんどの漢方薬に現れることがありますし、カンゾウという生薬を含有する漢方薬は、長期連用により低カリウム血症などの電解質代謝の異常をきたすことはよく知られています。
漢方薬に副作用がなく安全だといった過言は避け、服用後症状の改善がみられない場合や、副作用と思われる症状が現れた場合は医師又は薬剤師によく相談してください。
東洋医学は、問診や脈診の他、顔色や舌の状態などを重視する独特の診断法により、体質的なものと症状的なものを合わせた、その人が、その時点で現している体調である「証」(実証、虚証など)を決定し、その「証」に応じて最も適切な治療法が決定されます。
西洋医学が、病気の原因を明らかにして治療に当たるのに対して、東洋医学は、病気を人体全体や環境との調和の中でとらえ、崩れたバランスを治すことが治療であるとする考え方に基づいています。
目薬を点眼する順番は、通常それほど問題にはなりません。必要があれば、医師が点眼する順番を指示します。特に指示がなければ、どちらを先に点眼してもよいということです。
2種類の目薬を続けて点眼するときに、気をつけなければならないことは、順番よりもむしろその間隔です。先に点眼した目薬が十分に吸収されないうちに、間隔をあけず、もう一方の目薬を続けて点眼すると、目からあふれ出てしまうことがあるからです。
あふれ出てしまうと、有効成分の濃度が低下するので、十分な効果が期待できなくなるのは当然です。ですから、2種類の目薬を続けて点眼するときは、先に点眼した目薬が吸収されるまで、5分位は間隔をあけるようにしましょう。
また、たとえ目薬が1種類でも、点眼後すぐにまぶたを強くとじたりすると、やはり目薬はあふれ出てしまいますので気をつけましょう。
お茶やコーヒーの中にはタンニンという成分が多く含まれています。このタンニンが、鉄欠乏性貧血治療薬の鉄剤と結合し、鉄の吸収を妨げるとされています。
しかし、最近では、鉄欠乏性貧血で緑茶を飲んだ後に鉄剤を服用した患者さんと、緑茶を飲まなかった患者さんの血色素値を比較したところ、効果に影響を与えるほど差がなかったとする研究報告もあります。
これに関しては、今後の研究結果を見守る必要がありそうですが、いずれにしても薬は、水かぬるま湯で飲んだほうが安心です。
この他にも、薬の効き目を低下させる組み合わせとして、納豆と抗血栓薬のワルファリンカリウムなどがあります。逆に、薬の作用を強める組み合わせとして、グレープフルーツジュースと高血圧治療薬のカルシウム拮抗薬などがあります。
また、ビタミン、アルコール、ある種のハーブ類なども薬の効き目に影響することがありますので、詳しいことは薬剤師に相談してください。
錠剤やカプセル剤は、必ずコップ半分から1杯のぬるま湯か水で服用してください。
水なしで飲むとのどや食道にひっかかってしまい、その部分が潰瘍(かいよう)をおこすことがあります。また、ひっかかったカプセルが一部溶けて中の薬が飛散し、気管に入る危険性もあります。
水で服用した方がよいもう一つの理由は、薬が胃や腸から吸収されるためには、よく溶ける必要があるということです。
水なしで服用したときは、水で服用したときより薬の吸収に時間がかかるので、効果が現れるのが遅くなったり、効き目が弱くなったりします。
ですから、錠剤やカプセル剤に限らず、薬は水で服用しましょう。さらに、溶けやすさを考えると、水よりもぬるま湯での服用をおすすめします。
一般用医薬品として薬局や薬店で販売されているパップ剤には、メントールなどの成分によって冷感のするタイプと、トウガラシエキスなどの成分によって温感のするタイプがありますが、認められている効能、効果はどちらも同じで「肩こり、腰痛、関節痛、筋肉痛、筋肉疲労、打撲、捻挫(ねんざ)、骨折痛、しもやけ」となっています。
ですから、使用する人の好みで選択されればよいのですが、打撲や捻挫などの痛みには冷感タイプが、肩こりや筋肉疲労などには温感タイプが使われることが多いようです。
パップ剤は、前記の症状を軽減するための対症療法ですから、数日間使用しても症状が改善されないときや、症状が重いときは、医師又は薬剤師に相談してください。
薬は、よく両刃の剣に例えられます。病気を治したり、症状をやわらげたりする有益性を持つ反面、適正に使用されなければ、人体に害を及ぼす危険性も併せ持っています。
たとえ、適正に使用していたとしても副作用が現れる場合もあります。こうした危険性を少しでも回避するために、次のような事項を記載し注意を喚起しています。
1 疾病の種類、症状、合併症、既往歴、家族歴、体質、妊娠の有無、年齢や性別などからみて服用してはいけない場合
2 剤形、形状に由来する必要な注意や誤りやすい使用方法の指摘。相互作用を起こしやすい医薬品との併用についての注意。日常生活や食事に関連する注意
3 使用中又は使用後どのような症状(副作用)が現れた場合に中止し、医師、歯科医師、薬剤師に相談すべきか。
これらの注意事項は、使用する人の安全を確保するためのものですから、使用する前に必ず読んでおきましょう。また、薬を使い終わるまでは捨てないで、薬の外箱と一緒に保管しておきましょう。
医療機関や薬局などが休日や夜間で閉まっていて、薬が手に入らないときや、外傷の際の応急の措置のために、つぎのような薬や処置用品を常備しておくと便利です。
医薬品 | 処置用品 |
解熱鎮痛薬 | 体温計 |
総合かぜ薬 |
救急絆創膏(ばんそうこう) |
鎮咳去たん薬 | 脱脂綿 |
胃腸薬 | ガーゼ |
下剤 | 包帯 |
下痢止め | 綿棒 |
外皮用殺菌消毒剤 | はさみ |
湿布薬 | ピンセット |
かゆみ止め など | 氷まくら など |
この他にも、家族の年齢構成や持病の種類、かかりやすい病気の傾向によって必要なものを取りそろえておきましょう。
なお、保管に当たっては、高温、多湿を避け、衛生的な容器に入れて保管し、期限切れがないか定期的にチェックすることも大切です。
平成22年3月19日
このページの担当は 健康安全研究センター 企画調整部 健康危機管理情報課 食品医薬品情報担当 です。