研究年報 第58号(2007)和文要旨

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総説

ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症:東京都における検査と解析
 東京都では1987年より保健所におけるヒト免疫不全ウイルス(HIV)の検査を開始した.1993年には東京都南新宿検査・相談室を開設し,2003年より土日検査を開始した.東京都健康安全研究センターはHIV検査を担当し,保健所を中心とした検査体制を全面的にバックアップしてきた.検査を開始してから約20年を経過しているが,検査法の進歩,感染初期,遺伝子検査,サブタイプ,薬剤耐性等,様々な問題が生じてきた.HIV感染症についての概要とともに,それらの問題について概説する.
後天性免疫不全症候群,ヒト免疫不全ウイルス,サブタイプ, HIV検査,薬剤耐性,解析,東京

 

違法ドラッグの鑑定と流通品の推移
 薬物乱用防止対策の一環として,東京都は違法ドラッグの取締に力を入れている.これらを鑑定するには,機器分析から得られる薬物のスペクトルデータが必要である.違法ドラッグはデザイナーズドラッグであり,その化学構造によりいくつかのグループに分けることができ,その共通するスペクトルデータから薬物を推定することができる.これらを整理し,鑑定法について解説した.また,これまで都内に流通した違法ドラッグは,規制強化によって平成15年度から18年度にかけ大きく様変わりした.すなわち5MeO-DIPTに代表される5MeOグループのトリプタミン類は減少し,4AcO-DIPTに代表されるトリプタミン類あるいはMDMAグループの薬物が増加している.その一方で,新規な未規制の薬物も発見されている.これらの経過を総説として記述した.
乱用薬物の推移,違法ドラッグ,脱法ドラッグ,指定薬物,薬事法,東京都条例,薬物鑑定,機器分析

 

論文Ⅰ 感染症等に関する調査研究

<原著>イヌの外耳における Malassezia 属菌の保有状況と分離株の分子生物学的解析
 Malassezia属菌は,ヒトおよび動物の皮膚に常在する酵母であるが,近年,院内感染症を惹起した事例も報告されるようになってきた.そこで今回,東京都動物愛護相談センターに収容されたイヌの外耳におけるMalassezia属菌の保有状況と分離菌株の分子生物学的解析を試みた.その結果,Malassezia属菌は52頭のイヌのうち,33頭(63.5%)から検出された.このうち,31頭(59.6%)からrDNA塩基配列解析によりM. pachydermaitisと同定された株が分離された.分離31株は,ITS1領域を用いた分子系統樹解析により,5系統に分類された.また,52頭中3頭からM. japonica基準株との間に高い塩基類似度を示す株が分離された.
酵母,Malassezia属菌,イヌ,分子系統樹

 

<原著>食中毒事例から分離された乳糖遅分解のウエルシュ菌
 非定型的性状を示すウエルシュ菌による食中毒(2000年12月,原因食品:中華料理)を解明し,分離菌株の性状を調べた.患者ふん便等70件中15件から分離された原因菌は,分離平板上のレシチナーゼ反応部が通常と異なり赤橙色を呈し,ウエルシュ菌と推定し難い菌であった.乳糖分解による培地pH値の低下を検討した結果,典型的なウエルシュ菌では24時間培養時の平均pH値は4.8であったが,本事例由来株では平均pHは5.4であった.本菌は乳糖遅分解のためレシチナーゼ反応部が赤橙色を呈したと考えられた.
ウエルシュ菌,食中毒事例,レシチナーゼ反応,乳糖遅分解,非定型的性状

 

<原著>結核集団感染事例における分子疫学的解析法としての Variable Numbers of Tandem Repeats 法の検討
 VNTR法で広く用いられてきたMIRU,ETRの領域は,一部を除くと,日本で蔓延している北京型遺伝子を持つ結核菌株では,多様性は十分でないこと,北京型と非北京型では,領域によって多様性に大きな差があることが判明した.また,同一RFLPパターンを示した株を,VNTR法でも解析した結果,各事例内の株では同じ反復数を示したが,事例が異なると反復数の異なる領域があることが明らかとなった.RFLP法に加えて,VNTR法を併用することで,集団感染事例の事例内,事例間の関連など,よりきめ細かい分子疫学的情報を提供できると考えられた.
結核集団感染,IS6110-RFLP法,VNTR法

 

<原著>感染症発生動向調査におけるヒトパピローマウイルスの検出
 都内の性感染症定点医療機関より搬入された帯下拭い383件から,multiplex PCR法によるHPV遺伝子の検出を試みたところ,154件からHPV遺伝子が検出され,25件(6.5%)が発がん性リスク分類による低リスク群に,95件(24.8%)が高リスク群に分類された.受診者の年代別にHPV検出率をみると,若い世代での検出率が高かった.リスク群別の検出率をみると,低リスク群では30代で,高リスク群では10代および50代での検出率が高い傾向がみられた.
ヒトパピローマウイルス,マルチプレックスPCR,遺伝子解析,低リスク群HPV,高リスク群HPV

 

<原著>病原体定点医療機関における2006/2007シーズンのインフルエンザウイルス検出状況
 2007年1月より新たに14カ所のインフルエンザ病原体定点が選定され,6月までに搬入された臨床検体について遺伝子検査およびウイルス分離試験を行った結果,今シーズンは,AH3型を中心としたB型ならびにAH1型の混合流行であることが判明した.また,検出ウイルスの遺伝子配列を用いた系統樹解析ならびにワクチン株抗血清を用いた赤血球凝集抑制(HI)試験による分離ウイルスの抗原解析を行った結果,AH1型はワクチン株と異なる株であったことが判明し.AH3型,B型はワクチン株と交差反応性の高い株であることが判った.
病原体定点医療機関,インフルエンザウイルス,遺伝子解析,ウイルス分離試験

 

<資料>イヌ糞便からの薬剤耐性菌分離の試み
 イヌ134頭の糞便を対象に薬剤耐性菌であるMRSA,VREそしてESBL産生菌の分離を試みた.134件からはMRSA,VREは検出されなかったが,ESBL産生菌は1件(0.7%)検出された.検出されたESBL産生菌は,CTX-M-9グループに属するESBL遺伝子を保有していた.この遺伝子の遺伝子解析をおこなったところ,CTX-M-14型であった.
薬剤耐性菌,メチシリン耐性黄色ブドウ球菌,バンコマイシン耐性腸球菌,基質特異性拡張型βラクタマーゼ産生菌

 

<資料>ラテックス凝集法による自動分析用抗梅毒抗体試薬の有用性の検討
 Treponema pallidum(以下TPと略す)の感染により起こる梅毒の血清学的検査法は,脂質抗原を用いる方法とTP由来の抗原を用いる方法が実施されてきた.これらの方法は半定量法・用手法であるため,感度,迅速性および鋭敏度の優れたキット試薬が望まれた.最近,ラテックス凝集法による自動分析用抗梅毒試薬が開発されたので,当研究室に搬入された梅毒抗体検査依頼検体を用いて,従来法と比較した.その結果,従来法との一致率は高く,本検査法の有用性を認めたが,今後さらに特異性を高めるために検討が必要である.
梅毒,STS法,TP法,ラテックス凝集法

 

論文Ⅱ 医薬品等に関する調査研究

<原著>平成18年度都内における違法ドラッグ中の新規検出薬物
 東京都内で平成18年4月から平成19年3月の間で購入された違法ドラッグ99製品を分析した.その結果,9つの新しいデザイナードラッグを検出した.これらの合成物は,2-phenylethanamine,2-(2,4,5-trichloro-3,6-dimethoxy phenyl)ethanamine,2-[4-(2-aminoethyl)-2,5-dimethoxyphenylthio]ethanol,2-(ethylamino)-1-phenyl propan-1-one,1-(4-chloro-2,5-dimethoxyphenyl)propan-2-amine,N-[1-(benzo[d] [1,3]dioxol-5-yl)propan-2-yl]-N-methylhydroxylamine,1-(benzo[d][1,3]dioxol -5-yl)-2-(pyrrolidin-1-yl)pentan-1-one,2-amino-3-(5-hydroxyindolin-3-yl)propanoic acid 及び 2-methylbutyl nitriteである. それぞれの構造は,NMR(H,C),MS及びUVの分析の組合せによって確認された.本論文は,これらの薬物の分析データを報告する. 
違法ドラッグ,FLEA,MDPV,DOC,2C-T-2-OH,亜硝酸2-メチルブチル,2,5-ジメトキシ-3,4,6-トリクロロフェネチルアミン,核磁気共鳴スペクトル測定法,質量分析法

 

<原著>第4回知事指定薬物のスペクトルデータと平成18年度薬物分析調査
 平成18年9月8日に知事指定薬物に指定されたPMMA及びMethyloneのNMR(H,C),MS,UV及びIRのスペクトルデータについて記述する.また,平成18年度に試買あるいは試験依頼された99製品について,既報に従い分析を行った結果,70製品から,35種類の薬物が合計85件検出された.検出後麻薬に指定された3CPP,Methylone及び知事指定薬物となったPMMAがそれぞれ1製品,11製品及び1製品から検出された.35種の内訳は,平成19年4月1日から薬事法指定薬物となった17種,麻薬2種,新規薬物9種,既知薬物7種である.
知事指定薬物,違法ドラッグ,PMMA,Methylone,市販薬物調査

 

<原著>健康被害を起こした健康食品に含まれるダイオウの鑑別
 健康被害が多数報告された「天天素清脂胶嚢」という健康食品のカプセル内の粉末を光学顕微鏡で鏡検したところ, センノシドAを含有した11製品から,医薬品である生薬のダイオウ特有の組織を検出し,センノシドAを含有しない4製品からは気孔や柵状組織などの植物の地上部の組織を検出した.近縁種のマルバダイオウ,ギシギシ,キブネダイオウとはTLCパターンの比較により識別が可能であり,鏡検とTLCによる試験を組み合わせることで粉末状の健康食品においても,ダイオウを鑑別できることが明らかとなった.
健康食品,天天素清脂胶嚢,ダイオウ,鏡検,薄層クロマトグラフィー

 

<原著>医薬部外品および化粧品中紫外線吸収剤の分析に関する研究  フェルラ酸,ドロメトリゾールトリシロキサンを含む14成分同時分析法
 サンプロテクト商品に対する消費者ニーズの高まりとともに,医薬部外品および化粧品に配合される紫外線吸収剤もつぎつぎに新規物質が作られ,それに対応した簡便な同時分析法が求められる.著者らは前報(年報第57号)でアセトニトリルを移動相に用いた13成分同時分析法を報告しているが,今回新規物質としてフェルラ酸,ドロメトリゾールトリシロキサンを加え,市販品中使用頻度の減少したパラジメチルアミノ安息香酸2-エチルヘキシルを除外し,14成分同時分析法を検討した.
紫外線吸収剤,医薬部外品,化粧品,同時分析

 

<原著>化粧品中防腐剤の検査結果(平成16−18年度)と検査法の改良
 2006~2008年度の当研究室で行った化粧品651検体中の防腐剤検査の結果を化粧品の種類に別け,防腐剤24種について分別し計測した.その結果最も使用頻度高い防腐剤はmethylparaben(MP)で,2位はphenoxyethanol(PE),3位はpropylparabenであった.これを基にルーチンワークの化粧品中13防腐剤のスクリーニング法を改良した.すなわち衛生試験法のHPLC移動相に10%水を添加することで保持時間が近いMPとPEに十分な分離を得た.また標準液を2種類作ることで13防腐剤のスクリーニングが良好にできた.
化粧品,防腐剤,パラベン,フェノキシエタノール,液体クロマトグラフィー

 

<原著>市販タトゥーシール及びフェイスペインティング用品に含有されるホルムアルデヒドについて
 タトゥーシール,フェイス・ペインティング用ペン及びクレヨン中に含有されるホルムアルデヒドをHPLCによって分析した.人工汗中で40°C,2時間インキュべートした場合,全てのタトゥーシールからホルムアルデヒドが溶出した.人工汗の代わりに水でインキュべートした場合はホルムアルデヒドが溶出しないシールもあった.ホルムアルデヒド溶出量は時間と共に増加した.ホルムアルデヒドは,フェイス・ペインティング用クレヨンでは蛍光色の製品のみ検出されたが,フェイス・ペインティング用ペンからは検出されなかった. 
タトゥーシール,フェイス・ボディペインティング,ホルムアルデヒド

 

<資料>ワルファリンカリウム錠粉砕品の安定性と服薬指導
 ワルファリンカリウム錠粉砕品の品質を確保するため,安定性試験(長期保存及び加速試験)を行った.粉砕品を分包後,薬袋(紙製)に入れ保存した場合,25°C・光照射(24時間連続)でワルファリンカリウムの減少は10%程度であったことから,通常患者が保存する室内,1ヶ月程度では,ワルファリン含量の変化に大きな問題はないと思われる.ただし,それ以上の投与日数の分包品を患者に渡す場合は,薬袋を遮光袋に入れて渡す,あるいは患者へ十分な遮光を行うように指導するなど適切な服薬指導が必要である.
ワルファリンカリウム錠粉砕品,院内製剤,安定性,長期保存試験,光照射,遮光,光学異性体,服薬指導

 

<資料>生薬中の重金属及びヒ素に関する含量調査
 生薬の品質や安全性について世界的に関心が高まってきている現在,日本薬局方においても,生薬中の重金属及びヒ素の規格を整備中である.しかし,日局では限度試験であり,各金属の含有量が明確ではないため,安全性の確保を図るには不十分である.そこで,それらの実態を把握するため,サイシン等10生薬51試料について,原子吸光光度計等を用い,水銀,ヒ素,鉛,カドミウム,銅及びクロムの含量を調査した.その結果,水銀及び銅の生薬中の含量は食品と同程度であったが,他の4種金属の各含量は食品よりやや高い値を示した.
重金属,ヒ素,生薬,水銀,鉛,カドミウム,銅,クロム

 

<資料>生薬エキス製剤中の有機塩素系及びピレスロイド系農薬に関する含量調査
 昨今,生薬中の残留農薬の問題が指摘され,日本薬局方においても,生薬中の総BHC及び総DDTについて規格を整備しているところである.一方,生薬はそのエキス製剤として摂取されることが多いが,製剤中の農薬についてはあまり報告されていない.そこで葛根湯等,7処方の市販エキス製剤20製品について総BHC,総DDT及び生薬から検出されたことのあるピレスロイド系農薬3種を調査した.その結果,いずれの製品からも調査対象とした農薬を検出しなかった.
生薬エキス製剤,有機塩素系農薬,ピレスロイド系農薬,総BHC,総DDT

 

論文Ⅲ 食品等に関する調査研究

<原著>GC及びGC/MSによる食品中残留農薬の系統別分析法(第2報)
 前報で報告した食品中に残留する有機リン系,有機塩素系農薬等の系統別分析法に測定対象農薬16種類を追加し,計99農薬の測定法を確立した.さらに精製法及び測定法について検討を加えた.精製は油脂の多い試料においてEnvi-Carb/LC-PSAミニカラムによるクリーンアップに改良したところ,脂肪酸除去能が向上した.また有機リン系農薬の測定をGC-FPDとMSを併用する方法に改良したところ,ピーク同定作業の負担軽減が図られた.本法による添加回収試験をイチゴ,ホウレンソウ及びトウモロコシで行ったところ概ね70%以上の回収が得られた.
残留農薬,系統別分析,食品,ガスクロマトグラフ,ガスクロマトグラフ/質量分析計

 

<原著>ポピーシード中のモルヒネおよびコデイン分析法
 ポピーシード中のモルヒネおよびコデインのHPLCによる分析法を開発した.モルヒネ,コデインは75%メタノールで抽出し,Oasis MCXで精製した.LCの分離にはCAPCELL PAK C18 UG120カラム,移動相として0.1 mol/Lギ酸アンモニウム(pH8.5)-アセトニトリルを用いた.ポピーシードからのモルヒネおよびコデインの回収率は88%,92%で,CV値は3%,定量限界は0.5 µg/gであった.モルヒネ,コデインの確認はLC/MS/MSで行った.
モルヒネ,コデイン,ポピーシード,高速液体クロマトグラフィー,液体クロマトグラフ/タンデム質量分析法

 

<原著>熱ルミネッセンス(TL)法による照射食品の検知について
 東京都内で購入した藻類加工食品,生薬,香辛料等84検体について,熱ルミネッセンス(TL)法により放射線照射食品の検知を実施した.藻類加工食品では5検体中3検体,生薬では26検体中4体については,200°C~210°C付近に発光ピークが認められ,また,TL発光比が0.9~2.1であることから,放射線が照射されていると推定された.放射線が照射されていると推定される結果を得たものについては,事業者,所轄自治体等を通じ,遡及調査を行ったが,照射の事実は確認できなかった.
照射食品,熱ルミネッセンス法,香辛料,生薬,藻類加工食品,鉱物

 

<原著>食品用器具・容器包装及びがん具の溶出試験におけるヒ素の分析
 食品用器具・容器包装及びがん具の溶出ヒ素を測定するため,機器分析法であるICP/MS,ICP,HG/AAS,HG/ICP,XRFを検討した.いずれの方法でも食品衛生法のヒ素の規格値は測定可能であった.最も高感度で,試験溶液を前処理なしで直接測定できるICP/MSにより,市販セラミック製品,ゴム製品,金属製品及びがん具の計136試料について実態調査を行った.その結果,41試料から0.0005~0.028(As2O3として0.0007~0.037) µg/mLのヒ素が検出されたが,すべて金属缶やがん具の規格値以下であり,食品衛生上直ちに問題になる量ではなかった.
ヒ素,溶出,器具,容器包装,がん具,ICP/質量分析法

 

<原著>LC/MS/MS同時分析による穀類中のオクラトキシンおよびシトリニンの汚染調査
 LC/MS/MSを用いて,穀類中のオクラトキシンA(OTA),オクラトキシンB(OTB)及びシトリニン(CIT)の同時分析を行った.LC/MS/MS条件としてカラムにODS系カラム,移動相にアセトニトリル-1%ギ酸(4:6)混液,イオン化法にESI(+)を用いたところ,定量限界はOTA及びCITで0.07 µg/kg,OTBで0.03 µg/kgであった.本法を用い市販穀類33試料を調査したところ,OTAが6試料から0.2-1.8 µg/kg,CITが2試料から0.7及び1.1 µg/kg検出された.
オクラトキシンA,オクラトキシンB,シトリニン,マイコトキシン,高速液体クロマトグラフィー/タンデム質量分析法,穀類

 

<資料>食品添加物一日摂取量調査 −トコフェロール,ニコチン酸及びニコチン酸アミドについて−
 加工食品中の食品添加物の一日摂取量調査を行った.平成16年度は酸化防止剤のトコフェロール(以下Tocと略す),平成17年度は強化剤のニコチン酸(以下NAと略す)とニコチン酸アミド(以下NAAと略す)を調査した結果,一日摂取量平均値はα-Toc 7.03,β-Toc 0.47,γ-Toc 9.89,δ-Toc 4.81,NA 3.06,NAA 0.09 mgであった.4種のTocの摂取量合計値はADIに基づく一日許容摂取量を,NA及びNAAは食品摂取基準の上限値を大きく下回った.
食品添加物,一日摂取量,マーケットバスケット方式,トコフェロール,ニコチン酸,ニコチン酸アミド

 

<資料>卵に使用された色素の分析
 着色された卵殻より指定外着色料の塩基性色素「フクシン」を検出したため,「フクシン」として使用されているパラローズアニリン,塩基性フクシン,ニューフクシンを標準品に用いて同定試験を行ったところ,検出された「フクシン」はニューフクシンと同定された.これらの色素は主成分の他,数種の副成分を含むことから,フクシンの分析に際しては,目的とする成分の多い試薬を用い,TLC,HPLC及びHPLC-MS等の分析結果を合わせて判定する必要があることが分かった.また,卵黄中のカンタキサンチンの分析結果についても併せて報告した.
色素,卵,フクシン,カンタキサンチン

 

<資料>既存添加物の品質調査 −着色料−
 既存添加物及び一般飲食物添加物計15品目40製品について,第8版食品添加物公定書等に照らし,市販品の理化学的な品質を明らかにした.色価が表示と異なっていたものが3製品,カカオ色素の残留アセトンが業界自主規格値以上検出されたものが2製品,コチニール色素製剤について原体のたん白質が規格値を超える可能性があるものが1製品あった.確認試験は,一部判定が困難なものもあり,色調や沈殿生成条件等の記載の修正が望まれる検査項目があったが規格に適合していた.純度試験の重金属,鉛,ヒ素はすべて規格値以下であった.
既存添加物,品質,規格試験,クチナシ青色素,クチナシ黄色素,ムラサキトウモロコシ色素,コチニール色素,アナトー色素,カカオ色素

 

<資料>清涼飲料水中のベンゼンの分析
 東京都内で購入した清涼飲料水88検体について,厚生労働省告示の方法に従い測定を行ったところ,16 検体でベンゼンが検出され,そのうち1 検体は水道水の基準値である10 ng/mLを超える値であった.ベンゼンはアスコルビン酸が存在しない試料からも検出されたことから,アスコルビン酸以外の物質が関与する可能性が推察された.また,ベンゼンとその生成の原料とされる安息香酸,および生成に関与するとされる金属イオン,pHとの間には量的な相関は認められなかったが,温度と光は反応の促進因子であると考えられた.
ベンゼン,清涼飲料水,安息香酸,アスコルビン酸,ヘッドスペースGC/MS

 

<資料>ビール中のホルムアルデヒドの分析
 ビール中のホルムアルデヒドのGC/MSによる分析法を検討し,市販のビール中のホルムアルデヒドを測定した.試料中のホルムアルデヒドをPFBOAにより誘導体化し,n-ヘキサンで分配抽出後,GC/MSにより測定した.検出限界は0.009 µg/mL,定量限界は0.030 µg/mLであった.本法を用いて市販の外国産ビール,国産ビールおよび国産発泡酒類計23品目を分析したところ,1品目から0.032 µg/mL,7品目から痕跡量のホルムアルデヒドが検出された.今回ビール類から検出されたホルムアルデヒドの量は,健康に影響を及ぼす量ではないと考えられた.
ホルムアルデヒド,ビール,ガスクロマトグラフ/質量分析計

 

<資料>ミネラル補給用サプリメントの含有量調査 セレンの分析
 市販されているセレン含有サプリメント28製品について,セレンの含有量を調査し,日本人の食事摂取基準(2005年版)と比較検討したところ,一日最大摂取量が推奨量(25 µg/日)の6倍を超すもの2製品,5倍を超すもの1製品,4倍以上4製品,2倍以上7製品,推奨量以上8製品で,2/3以上が推奨量を上回っていた.また日本人の平均的なセレンの摂取量100 µg/日を加えると,上限量に近い製品があることも判明した.ミネラルサプリメントの継続的な摂取は,ミネラルの過剰摂取につながり望ましくないと考えられた.
ミネラルサプリメント,セレン,連続フロー方式水素化物発生装置,原子吸光光度法,灰化,推奨量,目安量

 

<資料>野菜類等の硝酸根,亜硝酸根含有量調査
 昭和58年度~平成4年度にかけて,東京都内の卸売市場に入荷した野菜類,果実類等の69品種,2,870検体について硝酸根,亜硝酸根の含有実態調査を実施した.硝酸根は,葉菜類で比較的高い値を示し,特に,チンゲンサイ,パクチョイで10,000 µg/gを超えるものがあった.亜硝酸根は,シュンギクで検出されたが,他はいずれも検出限界以下であった.野菜中の硝酸根の含有量は,種類や品種によって大きく異なり,同一品種でもその含有量に大きな幅があることが認められた.
野菜,果実,硝酸根,亜硝酸根

 

<資料>食品中の特定原材料(卵,乳,小麦)検査事例 −平成18年度−
 東京都内で製造された食品について,特定原材料のうち乳について8検体,卵について10検体,小麦について8検体をそれぞれ検査した.その結果,表示と異なる結果を示した食品はなく,今回調査した範囲では表示は適正に行われていた.また,都内で流通していた輸入食品28検体について小麦の検査を行った.その結果,スクリーニング検査で陽性であった5検体は確認検査でも陽性であり,表示と異なり小麦が含まれていたことがあきらかとなった.よって輸入食品では表示が徹底されていない可能性が示唆された.
特定原材料,酵素免疫測定法,ウエスタンブロット法,PCR法,卵,牛乳,小麦

 

<資料>フーリエ変換赤外分光光度法を用いた食品用合成樹脂製品の材質鑑別における試料前処理法
 食品用合成樹脂製器具及び容器包装の規格試験を行う場合,材質により適用する規格試験が異なるため,鑑別が必要である.鑑別には迅速かつ簡便に測定が行えるフーリエ変換赤外分光光度法が非常に有効であり多用されているが,良好なスペクトルを得るための試料前処理にはテクニックが必要である.そこで日常の行政検査において蓄積した試料前処理法について,合成樹脂の材質別(個別規格のある樹脂15種類,個別規格の無い樹脂8種類)及び剥離困難な多層フィルムについて,詳細を報告する.
フーリエ変換赤外分光光度法,合成樹脂,材質鑑別,前処理法

 

<資料>国内産野菜・果実類中の残留農薬実態調査 −平成18年度−
 平成18年度に都内で購入した国内産野菜及び果実類計22種57作物について残留農薬実態調査を行った.12種類の農薬が野菜9種9作物から痕跡(0.005 – 0.01 ppm)~0.39 ppmの範囲で検出された(検出率22%).特別栽培のこまつな1検体から基準値を超えるフルシトリネート及びフサライドが検出された.18種類の農薬が果実類7種11作物から痕跡 ~0.22 ppmの範囲で検出されたが,これらは基準値以下であった.
残留農薬,国内産農産物,野菜,果実,殺虫剤,殺菌剤,有機農産物,特別栽培農産物,慣行栽培農産物

 

<資料>多摩地域産農産物中の残留農薬実態調査−平成17年度および18年度−
 平成17年度から18年度に多摩地域で市販された多摩地域産87試料及びそ他の地域産(国産)69試料,計156試料の農産物について有機塩素系,有機リン系など110種の農薬成分に関し残留実態調査を行った.その結果,多摩地域産87試料中15試料から延べ17農薬成分が検出された.また,その他の地域産69試料のうち,25試料から延べ35農薬成分が検出された.これらのうち,多摩地域産きゅうりとみずな各1試料で残留基準値を超えてホスチアゼートが検出された.また,ロメインレタスなど3試料で適用外農薬が検出された.
残留農薬,多摩地域,農産物,有機リン系農薬,有機塩素系農薬,カルバメート系農薬,ピレスロイド系農薬,含窒素系農薬

 

<資料>輸入農産物中の残留農薬実態調査(有機リン系農薬及び含窒素系農薬) −平成18年度−
 2006年4月から2007年3月に都内に流通していた輸入農作物74種278検体について,有機リン系農薬および含窒素系農薬の残留農薬実態を調査した.有機リン系農薬(殺虫剤14種類)が17種28作物から,含窒素系農薬(殺虫剤3種類,殺菌剤13種類,除草剤2種類)が12種27作物から検出された.残留量は痕跡(0.005 ppm以上0.01 ppm未満)~0.34 ppmで,いずれも食品衛生法の残留基準値,一律基準値以下であった.
残留農薬,輸入農産物,有機リン系農薬,含窒素系農薬,殺虫剤,殺菌剤,除草剤

  

<資料>輸入農産物中の残留農薬実態調査(有機塩素系農薬,N-メチルカルバメート系農薬及びその他) −平成18年度−
 平成18年4月から平成19年3月にかけて輸入農産物278作物の残留農薬実態調査を行った.有機塩素系農薬では5種類の殺虫剤及び4種類の殺菌剤が痕跡~0.65 ppm検出された.N-メチルカルバメート系農薬では,1種類の殺虫剤が0.01及び1.2 ppm検出された.ピレスロイド系農薬では,8種類の殺虫剤が痕跡~0.64 ppm検出された.その他の農薬では,4種類の殺菌剤,1種類の除草剤,農薬共力剤及び植物成長剤が痕跡~6.7 ppm検出された.いずれの残留量も食品衛生法の残留基準値,一律基準値以下であった.
残留農薬,輸入農産物,有機塩素系農薬,N−メチルカルバメート系農薬,ピレスロイド系農薬,殺虫剤,殺菌剤,除草剤,農薬共力剤,植物成長調整剤

 

<資料>輸入食品中の放射能濃度(平成18年度)
 チェルノブイリ原発事故に由来する放射能汚染食品の実態を明らかにするため,平成18年4月から平成19年3月までに都内で流通していた輸入食品等270試料について放射能濃度を調査した.ロシア産の生鮮キノコのジロル(アンズタケ)から暫定限度値370 Bq/kgを超え,430 Bq/kgが検出された.その他,50 Bq/kgを超えて検出されたものは3試料あり,ベラルーシ産の生鮮キノコのジロルから200 Bq/kg,フランス産のシャンテレル(アンズタケの一種)から190 Bq/kg,イギリス産のブルーベリージャムから130 Bq/kg検出された.
チェルノブイリ原発事故,放射能汚染,輸入食品,調査,セシウム,キノコ,ブルーベリジャム,ヨウ化ナトリウム(タリウム)シンチレーション検出器,ゲルマニウム半導体検出器

 

<資料>卸売市場で流通する鮮魚,魚介類加工品及び浸け水のヒスタミン生成菌汚染状況
 水産物卸売市場に流通する鮮魚54検体,魚介類加工品78検体および浸け水30検体を対象に,ヒスタミン生成菌汚染調査をした結果,鮮魚22.2%,調味生魚26.7%,塩干物37.5%,味醂干し87.5%,ネギトロ75.0%,魚肉すり身100%からヒスタミン生成菌が検出され,Klebsiella spp.,Morganella morganiiEnterobacter spp.,Photobacterium damselaeSerratia sp.等が分離された.ヒスタミン生成菌の汚染菌量は1 g当り10未満から数万個と様々であったが,塩干物には高いものがあった.ヒスタミンは,イワシ丸干し4検体とサバ味噌漬から34~450 mg/100 g検出された.
ヒスタミン,ヒスタミン生成菌,鮮魚,魚介類加工品,浸け水,汚染

 

<資料>化学物質及び自然毒による食中毒等事件例(平成18年)
 平成18年に都内で発生した化学性食中毒等の事例のうち,1. ワラサの西京焼きを原因食としたヒスタミンによる食中毒,2. カジキマグロのステーキを原因食としたヒスタミンによる食中毒,3. メカジキの味噌漬けを原因食としたヒスタミンによる食中毒,4. サバの一夜干しを原因食としたヒスタミンによる食中毒,5. ブリの西京漬けを原因食としたヒスタミンによる食中毒,6. 小学校で栽培したジャガイモを原因食としたソラニン類による食中毒,7. オシロイシメジを原因食とした有症苦情,8. ワインの誤飲による有症苦情の8事例について報告する.
化学性食中毒,ヒスタミン,ワラサ,マカジキ,メカジキ,ブリ,ジャガイモ,ソラニン,オシロイシメジ,ワイン

 

<資料>食品に混入した虫の検査状況(平成14−18年度)とカタラーゼ試験における一考察
 平成14年度から18年度までの5年間に,食品に虫が混入した68件の苦情検体について虫の鑑別とカタラーゼ試験を行い,次のような結果が得られた.68件のうち39件は製造者等の側に問題があった.そのほとんどが衛生管理の不良であり,屋内に生息する害虫の駆除や屋外からの侵入防止対策により防ぐことが可能と考えられた.23件は消費者側に問題があり,主な原因としては,保管不良や偶発的混入であった.特定できなかったのは6件であった.甲虫類では110°C10分の加熱でもカタラーゼ反応が消失しないことがわかった.
虫,異物,食品,カタラーゼ試験

 

<資料>食品の苦情事例 (平成18年度)
 平成18年度に搬入された苦情検体の件数は61件であった.発生した苦情原因の内訳は,異物混入が43件と7割を占めており,続いて異臭に関するものが12例であった.異物としては樹脂やガラス片の混入の他,毛や虫の混入事例が数例見られた.また,給食に供された牛乳での異臭苦情が4例あった.その他,食品原料由来物や苦情者側に問題のある事例もあった.これらの苦情事例のうち,ミネラルウォーターと緑茶の混合により生じた沈殿物,粉ミルク中の青色固形物,カップ麺中のすじ肉,焼き魚中の骨腫,ボトルドウォーター中のカプセル剤について,概要,試験内容,結果,考察について紹介する.
食品,苦情,異物,ミネラルウォーター,タンニン,粉ミルク,クレヨン,熱分解ガスクロマトグラフ,カップ麺,横紋筋,アミノ酸分析計,タチウオ,カプセル

 

論文Ⅳ 生活環境に関する調査研究

<原著>路上等に出現するミミズ類の季節的変動
 多数のミミズが地表に這い出すことがしばしばみられ,住民からその原因について問い合わせがある.この行動の季節変化を知るため,都内の舗装地で這い出てくるミミズをほぼ毎日採集した.4種のミミズ(ヒトツモンミミズ,アオキミミズ,ハタケミミズ,ヘンイセイミミズ)がみられ,成体だけでなく幼体も這い出すことがわかった.多量の降雨中及び後にミミズが大量に出現する傾向にあった.しかし,晴天が続く11月にもミミズが出現した.降雨後の土壌中の二酸化炭素の増加がこの行動の要因といわれてきたが,他の誘因もあると推測された.
ミミズ,這い出し,季節的変動,雨

 

<原著>水道原水・浄水等における原虫類並びに糞便汚染指標細菌類調査結果(平成17年度,18年度)
 平成17年度と18年度に東京都の奥多摩地区及び島しょの浄水場原水・浄水について,原虫類及び糞便汚染指標細菌を調査した.原虫類は,浄水からは全て不検出であり,原水からは平成17年度に奥多摩地区のA4浄水場でクリプトスポリジウムが0.2個/20 L,島しょのD1浄水場でジアルジアが0.4個/20 L,平成18年度に島しょのE2浄水場でクリプトスポリジウムが0.2個/20 L検出された.
クリプトスポリジウム,ジアルジア,原水,浄水,糞便汚染指標細菌

 

<原著>多摩地域における浴槽水及びプール水からのレジオネラ属菌検出状況(平成17~18年度)
 平成17~18年度に,多摩地域に所在する施設の浴槽水1,398件とプール水603件のレジオネラ属菌検出状況を調査した.基準値(10 CFU/100 mL未満)を超えていた普通公衆浴場浴槽水は17年度8.3%,18年度2.7%,その他の公衆浴場浴槽水は14.4%,8.5%,旅館業浴槽水は27.5%,38.2%,プール水は1.1%,0.9%,ジャグジー水は22.1%,17.8%であった.一方,基準値は満たしていたものの,両年度で浴槽水の13.0%,プール水の2.6%,ジャグジー水の22.5%からもレジオネラ属菌を検出し,1 CFU/100 mL以上検出した試料水の半数以上を占めた.
レジオネラ属菌,公衆浴場,浴槽水,プール水,遊離残留塩素

 

論文Ⅴ 生体影響に関する調査研究

<原著>マイクロダイアリシス法による中枢神経作用薬のスクリーニング −MDPV強制経口投与マウス線条体内ドーパミン量の経時的変化−
 本研究は,メチレンジオキシピロバレロン(MDPV)をマウスに20 mg/kg経口投与し,線条体内の神経細胞外ドーパミン(DA)とセロトニン(5-HT)量の経時的変化をマイクロダイアリシス法(微量透析法)によって検索した.MDPVはDA作動性神経作用を持つ薬物で,作用は類似薬物であるMDMA,METHと比較して穏やかなものであった.なお,DA量と行動量の変化から,この種の中枢神経作用物質はマウス線条体内の神経細胞外DA量が200%以上に増加すると行動量増加を引き起こすと考えられた.MDPVの神経毒性は,今回の実験条件下で観察されなかった.
マイクロダイアリシス,ドーパミン,メチレンジオキシピロバレロン,線条体

 

<原著>市販品ハルマラの雄マウスを用いた神経系スクリーニング試験
 近年は化学系違法ドラッグに代わり,法律で規制されない植物系ドラッグが植物標本やハーブとして販売されている.植物系ドラッグは,麻薬や覚醒剤と類似した成分が含まれていることが多く,社会問題になりつつある.本研究は市販のハルマラを対象とし,我々が開発した神経系の作用を調べるためのスクリーニング試験法の適用を試みた.その結果,知覚過敏や眼瞼の開裂,自発運動の抑制等の症状がみられ,またハルマラに起因する全身性のふるえが観察された.したがってこの試験法は,植物系ドラッグに対しても有用であることが示された.
スクリーニング試験,神経系,雄マウス,ハルマラ抽出液

 

<原著>アタパルジャイト及びワラストナイトのチャイニーズハムスター肺由来V79-4細胞を用いた小核試験
 アスベスト代替物の変異原性を3種類のアスベストを対照に,チャイニーズハムスター肺由来細胞であるV79-4を用い小核試験により検討した.試験は天然鉱物由来のアタパルジャイト2品目及びワラストナイト3品目について実施した.その結果,アタパルジャイト1品目ではアスベストより高濃度の100 µg/mL,ワラストナイト1品目では50 µg/mL以上の濃度で有意な小核誘発が見られた.
アスベスト,アスベスト代替物,アタジェル,ナイグロス,ナイアド

 

<原著>コントロールICRマウスにみられた肝臓の脂肪変性に関する考察
 ICRマウスの生物学的性状が,生育所あるいは飼料の違いによりどのように変わるか検討した.また体重値の違いによる比較を行った.ICRマウスは成長に伴う体重増加に個体間で大きなバラツキを示し,体重増加が顕著なマウスは生育所および飼料の違いにかかわらず全群に認められた.高体重群のマウスでは,T-CHO,TGおよびALTの明らかな上昇,肝臓の腫大及び肝細胞の脂肪変性が認められた.これらの肝臓の変化はJcl:ICRマウスよりもCrlj:CD1(ICR)マウスで多い傾向が認められた.
ICRマウス,肝臓,脂肪変性,体重,食餌効率,総コレステロール,トリグリセリド

 

<原著>消臭およびハウスダスト除去を目的とした噴霧型家庭用品の幼若期投与後の生殖に及ぼす影響
 家庭用の噴霧型のハウスダスト除去剤:製品Aの幼若期投与後の生殖におよぼす影響を調べた.マウス新生仔に出生後0から20日まで毎日,製品Aを0(対照群) から2.0 mLを含む水溶液5 mL/kg体重を強制経口投与し,その後無処置で飼育し,10週齢で同群内の雄雌を交配し,催奇形試験と繁殖試験を行った.催奇形性試験では,黄体数,着床数,早期および後期吸収胚数,生胎仔数,生胎仔重量,生胎仔雄雌比,外表および骨格奇形に変化は見られなかった.また,繁殖試験では,出生仔数,出生仔重量,生出生仔数あるいは死出生仔数,出生仔雄雌比,出生仔平均重量に変化は見られなかった.しかし,体重1 kgあたり2.0 mL投与群の雌F1新生仔の生後21日までの死亡数が対照群より高く,同群の雄F1新生仔の生後21日の相対精巣重量が対照群より低かった.
ハウスダスト除去剤,マウス,新生児,催奇形性,繁殖毒性

 

<原著>消臭およびハウスダスト除去を目的とした噴霧型家庭用品の安全性試験 2)
 家庭用の噴霧型のハウスダスト除去剤:製品Bの安全性試験を,マウス新生仔および成獣で行った.マウス新生仔に出生後0から20日まで毎日,製品Bを0(対照群) から4.0 mLを含む水溶液 5mL/kg体重を強制経口投与し,投与期間中の死亡の観察と体重測定,投与終了翌日の主要臓器の重量測定,血液学的検査を行った.製品B 2.0 mL /kg体重以上を投与された雌雄の新生仔で,対照群と比べて,死亡率の増加,体重増加の抑制,臓器(肝臓,胸腺,副腎および精巣)重量の低下が見られた.同様に成獣に21日間投与した結果は,対照群と有意な差はなかった.
ハウスダスト除去剤,毒性,マウス,新生児,成獣

 

<原著>消臭およびハウスダスト除去を目的とした噴霧型家庭用品の安全性試験 3)
 家庭用の噴霧型のハウスダスト除去剤:製品Cの安全性試験を,マウス新生仔および成獣で行った.マウス新生仔に出生後0から20日まで毎日,製品Cを0(対照群)から4.0 mLを含む水溶液5 mL/kg体重を強制経口投与し,投与期間中の死亡の観察と体重測定,投与終了翌日の主要臓器の重量測定,血液学的検査,血液生化学検査を行った.製品Cを投与された雌雄の新生仔で,対照群と比べて,上記の指標に変化は見られなかった.同様に成獣に21日間投与した結果は,対照群と有意な差はなかった.
ハウスダスト除去剤,毒性,マウス,新生児,成獣

 

論文Ⅵ 公衆衛生情報に関する調査研究

<原著>我が国における世代出生数の動向
 我が国で現在進行中の出生数の減少は,1950年代後半の世代から開始した世代出生率の低下を直接の原因として始まり,これが出産適齢期にある女子の世代人口自体の減少とあいまって増幅されてきたものと考えられる.今後,適齢期にある当事者の願望と意思と能力を尊重しつつ,「ワーク・ライフ・バランス」をはじめとする諸政策をとおし,少子化対策を一層推進していくことが重要であろう.
出生数,世代出生数,無児女性率,世代マップ,年次推移,家族政策

 

<原著>東京都感染症発生動向調査データの解析  − インフルエンザ定点医療機関とインフルエンザ −
 感染症発生動向調査の内科定点が104か所増設されたことによって,定点充足率は22.2%から78.7%に増加した.新内科定点のピーク時の定点当たり報告数は,既存内科定点と比較して多かった.また,内科定点が増設されたことで,15歳以上の流行が早くに探知できる可能性が示唆された.2006-07年シーズンのインフルエンザは,過去7シーズンと比較して,最も遅い時期に流行が始まり,3月末でもまだ終息していなかったが,7~15歳未満の患者数は春休みに入り急速に減少した.これは学級閉鎖等情報と1週間のずれでよく一致した.
感染症発生動向調査,インフルエンザ,インフルエンザ定点,学級閉鎖

 

論文Ⅶ 精度管理に関する調査研究

<原著>固相抽出—高速液体クロマトグラフ法による陰イオン界面活性剤の分析に関する外部精度管理
 わが国では報告がない固相抽出-高速液体クロマトグラフ法による陰イオン界面活性剤の外部精度管理を実施した.配布試料の希釈及び配布試料の容器の洗浄操作を測定条件に加えた.配布試料の濃度は1 週間変化しなかった.評価基準内にあった機関は,25機関中22機関であった.棄却後の測定値における中央値は0.0541 mg/L,Zスコアの±3の範囲は0.0441-0.0640 mg/Lであった.評価基準外であった3機関の原因は,計算ミス,分析装置の調整不足及び不完全な固相抽出などが考えられた.
陰イオン界面活性剤,固相抽出-高速液体クロマトグラフ法,外部精度管理

 

<原著>水道水中のナトリウムの分析に関する外部精度管理
 平成18年度に行った水道事業者及び厚労省登録検査機関に対するナトリウム分析の外部精度管理について報告した.使用した分析方法はICP法が最も多かった.公定法の3法で測定した平均値には有意な差はなかった.評価基準外は3機関で,このうち2機関の原因究明及びその対応策は妥当であった.他の1機関は市販標準液濃度が表示値より高いと回答したが,検討の結果,当該機関の使用した標準液濃度は表示値通りであり,ICPの軸方向測定方式で高濃度測定した際に他元素によるイオン化干渉で発光強度増加が起こることが判明した.
ナトリウム,外部精度管理,誘導結合プラズマ発光分光分析法,イオン化干渉

 

<資料>東京都食品衛生検査施設GLP内部点検調査報告(平成18年度)
 東京都食品衛生検査施設に対する信頼性確保部門の業務として,平成18年度は健康安全研究センター26,市場衛生検査所4,芝浦食肉衛生検査所2,東京都保健所11の合計43施設を対象に,GLP内部点検を実施した.検査実施施設では試薬・機器の管理,生データの検証等を中心に実施した.また,収去実施施設では,通常の各種記録簿の点検に加え,特に検査結果通知書の検証について点検した.その結果,10施設に対して文書による改善措置要請を行った.改善報告を受けた後,すべての施設に対して確認点検を実施し,改善状況を確認した.
適正管理運営基準,内部点検,信頼性確保部門,標準作業書
東京都環境放射線測定サイト 東京都感染症情報センター 東京都健康安全研究センターサイト
(このホームページの問い合わせ先)
tmiph<at>section.metro.tokyo.jp
※<at>を@に置き換えてご利用ください。
また、個別にお答えしかねる場合も
ありますので、ご了承ください。
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