日本におけるがん死亡の動向予測(がん ガン 癌 死亡 動向 予測 日本):(東京都健康安全研究センター)

東京都健康安全研究センター年報,55巻,347-356 (2004) 

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関連文献

  日本におけるがん死亡の動向予測
   東京都健康安全研究センター年報,62巻,275-281 (2011)

 


 

研究要旨

 

 東京都健康安全研究センターで開発している疾病動向予測システムを用いて,肺がん,胃がん,乳がん,子宮がんなどの死亡特性を分析し,2015年の死亡者数を予測した.がんによる死亡者総数は男子20万名,女子13万名と予測される.肺がんによる死亡者数の増加は続くものの増加率は減少をはじめ,男子4.9万名,女子2万名程度になるものとみられる.胃がんによる年間死亡数は着実に減少し,男子2.9万名,女子1.4万名と予想される.乳がん及び子宮がんの死亡者数は,それぞれ1.3万名,6.6千名と予測される.

 


 

研究目的

 

 衛生行政の基本的な使命は生活環境の安全性の維持と向上を図ることにある.この使命を達成するに当たり,地域における生活環境の安全性と地域住民の健康損失の状況を定式的かつ継続的に観測するシステムの構築は非常に重要な意味を持つ.当センターでは,地域における疾病事象を把握し,衛生行政を支援するために疾病動向予測システムを開発している.本論文では,このシステムを用いて日本におけるがん死亡の特性と今後の動向について精密分析した結果を報告する.

 

研究方法

 

 東京都健康安全研究センターで開発している疾病動向予測システム1−5)(SAGE:Structural Array GEnerator)を用いて,肺がん,胃がん,乳がん,子宮がんなど16種のがんの死亡特性を分析し,2001年以降2015年までの動向を予測した.

 縦軸を出生世代,横軸を暦年(調査年)とする時間平面の所定の位置に,対象となる事象の数量もしくはその数量の多寡に応じた色彩を配置した疑似地形図が世代マップ2,3)である.人口動態統計の死亡者数を用い,縦軸を出生世代,横軸を暦年とする3年3世代メッシュを単位とした世代マップを作成し,年次推移の動向も考慮し,死亡特性を分析した.各行(出生世代)におけるピークを行内ピーク,各列(暦年)におけるピークを列内ピークと定義し,これらのピークの世代マップ上の分布を分析した上で,コーホート変化率法6)により死亡者数の予測を行った.

 

研究結果および考察

 

 わが国における主要ながんによる死亡者数の年次推移を比較し,世代マップから分かるがん死亡の特徴を示す.

 

1.全がん(図1)

 死亡者数を年次推移で見ると,男子では,1950年の32,670名が2000年の179,140名へと5.5倍に増加している.女子では,同様に31,758名から116,344名へと3.6倍に増加している.

 世代マップで見ると,男子の死亡者数の列内ピークは1950年頃には約60歳であったが,次第に高齢側に移動して1990年頃には約75歳となった.しかし1990年代に入り1926-28年世代でのピークが大きくなり2000年には,ピークが約70歳になっている.死亡者数の増加率は段々減少し2010年頃に現在の1.1倍の20万名に達し,2015年までこの停滞状態が続くと予測される.女子の死亡者数の列内ピークは1950年には約65歳であったが,順調に高齢側に移動して2000年には約80歳になっている.女子では男子とは異なり1926-28年世代のピークが観測されない.2015年頃の年間死亡者数は1.2倍の13万名に達すると予測される.

 

図1. 全がんによる死亡の年次推移と世代マップ(男子)(2001年以降は予測値)

 

2.口腔・咽頭のがん(図2)

 死亡者数は男子では,1955年の414名が2000年の3,610名へと8.7倍に増加している.女子では,同様に236名から1,456名へと6倍に増加している.

 世代マップで見ると男子の死亡者数の列内ピークはどの調査年においても約70歳である.2015年頃の年間死亡者数は5,000名と予測される.女子の死亡者数のピークは75〜85歳に広く分布している.2015年頃の年間死亡者数は1.9倍の2,800名に達すると予測される.

 

図2. 口腔・咽頭のがんによる死亡の年次推移と世代マップ(男子)(2001年以降は予測値)

 

3.喉頭がん(図3)

 死亡者数は男子では,1955年の536名が2000年の958名へと1.8倍に増加しているのに対し,女子では逆に181名から88名へと減少している.

 世代マップで見ると男子の死亡者数の列内ピークはどの調査年においても75歳前後である.2015年頃の年間死亡者数は720名程度と予測される.女子の死亡者数の列内ピークは明確には観測できない.2015年頃の年間死亡者数は30名程度と予測される.

 

図3. 喉頭がんによる死亡の年次推移と世代マップ(男子)(2001年以降は予測値)

 

4.食道がん(図4)

 死亡者数は男子が1955年の2,102名から2000年の8,706名まで単調かつ顕著な増加を示すのに対し,女子では1990年まで1,200名前後でほとんど変化のないままに経過していたが,その後漸増し2000年には1,550名となっている.

 世代マップで見ると男子の死亡者数の列内ピークは1955年には60歳代後半にあったが次第に高齢側に移動して1985年頃には75歳付近に位置した.しかし1985年頃から1923-28年世代に新たなピークが現れ,2000年の列内ピークは60歳代後半になっている.2015年頃の年間死亡者数は現在の1.3倍の11,000名と予想される.女子の列内ピークは72-74歳の位置に始まり,これも次第に高齢側に移って2000年では70歳代の後半にある.行内ピークは1887-1916年の世代で観察でき,年齢位置は列内ピークにほぼ一致する.今後の死亡者数は微増傾向をたどり,2015年頃には現在の1.2倍の1,800名程度になるとみられる.

 

図4. 食道がんによる死亡の年次推移と世代マップ(男子)(2001年以降は予測値)

 

5.胃がん(図5)

 死亡者数は1955年の男女各22,899名および14,407名に始まり1970年代まで微増を続け,それぞれ3万名および2万名前後に達するが,以後はほとんど変化せず,2000年頃には微減傾向がみられる.1955年から1970年代まで男女差はほぼ1万名に保たれていたが,1980年頃よりその差が漸次拡大し2000年には約1.5万名となっている.なお,1994年から1995年における死亡者数の不連続な増加は,この時期に死因分類が国際疾病分類第9回修正から同第10回修正へ変更されたことによるものと考えられる.

 世代マップで見ると男子の列内ピークは食道がんと同じく1950年代には66-68歳にあり,次第に高齢側に移動して1990年頃には75-77歳となった.しかし食道がんと同様に,1990年頃から1926-28年世代に新たなピークが現れ,2000年の列内ピークは約70歳となっている.また行内ピークは1890-1922年の世代で観察でき,その年齢位置はほぼ69-77歳である.なお今後1926-31年前後の世代で多少の増加が予想されるが,年間死亡者数は着実に減少するとみられる.2015年頃の年間死亡者数は約29,000名と予想される.女子の列内ピークは1950年頃には69-71歳であったが,これも次第に高齢化して2000年には84-86歳となっている.行内ピークは1887-1913年の世代で観察でき,年齢位置は列内ピークにほぼ一致する.今後も年間死亡者数は着実に減少し,2015年頃には14,000名前後と予測される.

 

図5. 胃がんによる死亡の年次推移と世代マップ(男子)(2001年以降は予測値)

 

6.結腸がん(図6)

 死亡者数は1955年の男女それぞれ723名と905名から始まり単調に増加する.2000年の死亡者数は男女それぞれ12,139名,11,498名である(図6).

 世代マップで見ると男子の列内ピークは1965年頃は69-71歳であったが次第に高齢側に移動して1990年頃には78-80歳となった.しかし食道がんと同様に,1990年頃から1926-28年世代に新たなピークが現れ,現在の列内ピークは約75歳になっている.行内ピークは1887-1916年の世代で観察できる.年齢位置は75-77歳から次第に上昇して,2000年では81-83歳である.死亡者数の増加は今後も続き,2015年頃の年間死亡者数は約15,000名に達するとみられる.女子の列内ピークは最初72-74歳であったが,次第に高齢化する傾向がみられる.行内ピークは1884-1913年の世代で観察できる.年齢位置は75-77歳から急速に高齢化が進み,1914-1916年世代では84-86歳である.年間死亡者数は着実に増加し,2015年頃には14,000名前後と予測される.

 

図6. 結腸がんによる死亡の年次推移と世代マップ(男子)(2001年以降は予測値)

 

7.直腸がん(図7)

 死亡者数は1950年代後半は男女ほぼ同数(1955年:男子1,356名,女子1,255名)であったが,単調に増加する過程で次第に男子の死亡者数が優勢となり,2000年の段階では男女比は約1.7(男子7,729名,女子4,582名)となっている.

 世代マップで見ると男子の列内ピークは最初は69-71歳であったが,次第に上昇して1980年代後半には75-77歳になった.しかし1980年以降は1926-28年世代にピークが出現し,これが成長したため2000年には,列内ピークは69-71歳に戻ってしまった.行内ピークは1887-1919年の世代で観察できる.年齢位置はおおむね75-77歳で安定している.死亡者数は今後も増加を続け,2015年頃の年間死亡者数は約9,500名と予測される.女子の列内ピークは1955年頃には69-71歳であったが,次第に高齢化する傾向がみられる.行内ピークは1884-1913年の世代で観察でき,年齢位置はほぼ81-83歳である.死亡者数は今後も増加を続け,2015年頃は6,000名弱の年間死亡者数になると予測される.

 

図7. 直腸がんによる死亡の年次推移と世代マップ(男子)(2001年以降は予測値)

 

8.肝がん(図8)

 肝がんは国際死因分類第8回修正が行われた1968年以降しか観察できない.死亡者数は男子5,468名,女子3,544名に始まって共に増加するが,1970年代後半から特に男子の増加が急速となる.2000年には男子は23,602名となり女子10,379名の2倍となっている.

 世代マップで見ると男子の列内ピークは1968年には66-68歳であったが,1980年には69-71歳になった.1980年以降になると,1920年代後半の世代を中心とするピークが出現してくる.行内ピークは1899-1928年の世代で観測され,年齢位置は72-78歳にわたる.1920年後半世代での死亡がピークを過ぎたことから,2015年頃の年間死亡者数は20,000名ほどに減少するとみられる.女子の列内ピークは69-71歳から高齢側に移動し,2001年には72-74歳にある.行内ピークは1899-1916年の世代で観察でき,年齢位置は81-83歳である.死亡者数の増加は次第に緩慢となり,2015年頃には年間12,000名前後になることと予測できる.

 

図8. 肝がんによる死亡の年次推移と世代マップ(男子)(2001年以降は予測値)

 

9.胆嚢がん(図9)

 1958年の死亡者数は男女ほぼ同数(1958年:男子429名,女子500名)であったが,単調に増加しつつ次第に女子優位の傾向が顕著となったことが注目される.2000年には男子の6,913名に対して,女子は8,240名である.

 世代マップを見ると,男子の列内ピークは1958年頃には66-68歳であったが,次第に高齢側に移動し,2000年では78-80歳となっている.行内ピークは1890-1919年の世代で観察でき,年齢位置は75-77歳から次第に上昇して,2000年では78-80歳である.死亡者数は2010年頃に7,700名まで増加し2015年頃もその程度になるとみられる.女子の列内ピークの位置も男子のそれとほぼ同様に推移している.行内ピークは1884-1913年の世代で観察できる.年齢位置は78歳前後から81歳前後へと高齢化する傾向がみられる.死亡者数は2010年頃に8,600名とピークを示し,2015年には約8,000名になるものと予想される.

 

図9. 胆嚢がんによる死亡の年次推移と世代マップ(男子)(2001年以降は予測値)

 

10.膵がん(図10)

 死亡者数は1955年には男子625名,女子477名で,以後男子優位のまま単調に増加する.2000年の死亡者数は1955年の20倍弱の男子10,380名,女子8,714名である.

 世代マップで見ると最初63-65歳の位置にあった男子の列内ピークは,徐々に高齢側に移動して,1990年頃には75-77歳になった.しかし食道がんと同様に,1990年頃から1926-28年世代に新たなピークが現れ,現在の列内ピークは約75歳になっている.行内ピークは1881-1919年の世代で観察できる.年齢位置はおおむね75歳前後である.死亡者数は今後も増加を続け,2015年頃の年間死亡者数は15,000名程度になるものとみられる.女子の列内ピークの位置も男子のそれとほぼ同様に推移している.行内ピークは1884-1916年の世代で観察でき,年齢位置はおおむね80歳前後である.死亡者数は増加を続け,2015年頃には年間13,000名前後と予測される.

 

図10. 膵がんによる死亡の年次推移と世代マップ(男子)(2001年以降は予測値)

 

11.膀胱がん(図11)

 膀胱がんも肝がんと同様に国際死因分類第8回修正が行われた1968年以降しか観察できない.死亡者数は男子1,005名,女子524名に始まり共に増加し,2000年には男女おのおの3,184名と1,496名である.

 世代マップで見ると男子の列内ピークは70歳付近にあったが,次第に高齢側に移動し,2000年では81-83歳となっている.死亡者数は増加を続け,2015年頃の年間死亡者数は5,500名ほどとみられる.女子の列内ピークの位置は72-74歳から高齢側に移動し,2000年には85歳位にある.死亡者数は増加を続け,2015年頃には年間2,500名前後になると予測される.

 

図11. 膀胱がんによる死亡の年次推移と世代マップ(男子)(2001年以降は予測値)

 

12.腎がん(図12)

 腎がんも1968年以降しか観察できない.死亡者数は男子445名,女子279名に始まって共に増加し,2000年には男女おのおの2,685名と1,348名である.

 世代マップで見ると男子の列内ピークは60歳前半にあったが,次第に高齢側に移動し,1990年頃には70歳後半となった.1990年頃から1926-28年世代に新たなピークが現れ,現在の列内ピークは70歳頃になっている.死亡者数は増加を続け,2015年頃の年間死亡者数は3,400名ほどとみられる.女子の列内ピークの位置は60歳後半から高齢側に移動し,2000年では80歳位にある.死亡者数は増加を続け,2015年頃には年間2,200名前後になると予測される.

 

図12. 腎がんによる死亡の年次推移と世代マップ(男子)(2001年以降は予測値)

 

13.肺がん(図13)

 死亡者数は1958年には男女おのおの2,919名と1,352名で,胃がんのほぼ1/10であった.しかし,それ以後の増加は単調かつ急激で,2000年には男子39,053名と女子14,671名の2.5倍となった.

 世代マップで見ると男子の列内ピークは66-68歳の位置にあったが,1980年以降になると,さらに1920年代後半の世代を中心とするピークが出現してくる.それが次第に高齢側に移動し,2000年では72-74歳となっている.行内ピークは1890-1919年世代で観察でき,年齢位置は75-80歳である.死亡者数は増加を続けるものの増加率は減少し,2015年頃の年間死亡者数は49,000名程度になるものとみられる.女子の列内ピークの位置は1958年の63-65歳から高齢側に移動し,2000年では78-81歳にある.行内ピークは1890-1916年の世代で観察でき,2000年の年齢位置は81-83歳である.男子と同様に死亡者数の増加は次第に緩慢となり,2015年頃には年間20,000名前後になると予測される.

図13. 肺がんによる死亡の年次推移と世代マップ(男子)(2001年以降は予測値)

 西欧各国における肺がんの動向を年齢調整死亡率で比較したのが図14である.各国とも男子では,1990年前後から死亡率の低下が始まっている.日本も各国と同様に肺がんの年齢調整死亡率は今後減少していくものと考えられる.男子に比して,女子では年齢調整死亡率の減少はほとんど観測されていない.1990年代後半に入り日本,イタリア,スウェーデンでは増加が止まりつつある.今後の動向に注目する必要がある.

 

図14. 肺がんの年齢調整死亡の年次推移(7か国)

14.白血病(図15)

 死亡者数は1955年には男子1,214名,女子824名で,以後男子優位のまま単調に増加する.2000年の死亡者数は1955年の約3倍の男女それぞれ3,970名,2,796名となっている.

 1980年代に入り,小児期における白血病死亡が減少していることが注目される.2015年頃の年間死亡者数は男女それぞれ5,000名と3,400名程度となると予測される.

 

図15. 白血病による死亡の年次推移と世代マップ(男子)(2001年以降は予測値)

 

15.前立腺がん(図16)

 死亡者数は1955年には273名であったが,2000年には7,514名と27倍強に増加している.

 世代マップで見ると1955年に70歳前半にあったピークは,暫時高齢化していき2000年では85歳前後になっている.2015年頃の年間死亡者数は15,000名程度となると予測される.

 

図16. 前立腺がんによる死亡の年次推移と世代マップ(男子)(2001年以降は予測値)

 

16.子宮がん(図17)
 死亡者数は1950年の8,783名から着実に減少して1993年の4,445名まででほぼ半減した.

 世代マップを見ると子宮がんの列内ピークは年齢依存性というよりはむしろ世代依存性が顕著で,1902-13年の世代が寄与している.その結果,年齢位置は最初の51-53歳に始まって次第に高齢側に移動し,2000年では79-81歳となっている.また1980年以降は1923-25年世代を主とする低い列内ピークが出現しており,1902-13年世代のピークも融合し,現在72-81歳にかけて低い丘状のピークが観察される.行内ピークが観察できるのは1908-1937年の世代である.1908-25年世代では,その年齢位置はおおむね51-56歳であったが,次第に高齢側に移動し現在は63-65歳となっている.団塊の世代がこの年齢域に参入するため,年間死亡者数は漸増して,2015年頃には6,600名程度になるものと予測される.

 

図17. 子宮がんによる死亡の年次推移と世代マップ(女子)(2001年以降は予測値)

 

17.乳がん(図18)

 子宮がんとは対照的に乳がんによる死亡者数は1955年の1,572名から2000年の9,171名まで6倍弱の増加を示してい.

 世代マップで見ると乳がんの列内ピークは48-51歳の位置に始まり,次第に高齢化して2000年では54-56歳にある.行内ピークの位置は全期間を通じて明らかでなく,特に1910年以前の世代では広い年齢域にわたって低い水準の死亡者数が分布している.また1910年前後の世代を境に,それ以後の世代での死亡者数急増傾向が注目される.今後も死亡者数は増加の一途をたどり,2015年頃には13,000名に達するとみられる.

 

図18. 乳がんによる死亡の年次推移と世代マップ(女子)(2001年以降は予測値)

 

結論

 

 がんによる死亡者数の推移は,部位と性別により非常に多彩である.1950年代と比して減少著しい子宮がん,近年停滞から減少への傾向が明らかになりつつある胃がんに対して,他の部位のがんはおおむね男子優位で増加する傾向にある.またその中にも,微増の女子の食道がん,男女同数の結腸がん,女子優位の胆嚢がんなど,特異な推移傾向を示して,疫学的成因の探索と分析が待たれる問題が少なからず含まれている.しかも,こうした部位別がんの死亡パターンは,各国でそれぞれ大きく異なっており,決して一様ではない.わが国におけるある種のがんの動向が生活習慣の欧米化によると言われているが,やや短絡的に過ぎる説明といえないだろうか.今後,がんによる死亡者数の動向を精密に観測して,がんの要因分析について十分な検討が必要と考える.

 

参考文献

 

1)池田一夫,上村尚:人口学研究,30,70-73, 1998.

2)SAGEホームページ: https://www.tmiph.metro.tokyo.lg.jp/sage/

3)池田一夫,竹内正博,鈴木重任:東京衛研年報, 46, 293-299, 1995.

4)倉科周介,池田一夫:日医雑誌, 123, 241-246, 2000.

5)倉科周介:病気のなくなる日−レベル0の予感−, 1998, 青土社, 東京.

6)金子武治,伊藤達也,廣嶋清志,他:人口推計入門, 98-110, 2002, 古今書院,東京.

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