室内環境関連の発表内容

室内環境関連発表内容  2013年度〜

●雑誌掲載  ★学会発表  →研究年報等

 

題名をクリックすると簡単な要旨が見られます。研究年報についてはこちらへ

 

 

【2019年度】


環境試料中フタル酸ジイソノニル及びフタル酸ジイソデシルの分離定量法 (室内環境学会)

2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレート及び2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジイソブチレートのVOCs標準法における石英ウールへの吸着について (室内環境学会)

東京湾産魚介類中の残留ダイオキシン類濃度推移 (全国衛生化学技術協議会)

平成30年度東京湾産魚類中のコプラナーPCB汚染源の推察 (地方衛生研究所全国協議会関東甲信静支部・理化学研究会) 

 

【2018年度】

大気PM2.5中の硫酸アンモニウム分別定量法の開発 (大気環境学会誌 Vol.53, No.6, pp207-218)

PM2.5中硫酸アンモニウム及び硫酸水素アンモニウムの分別定量法 (大気環境学会)→大気環境学会誌 Vol.53, No.6,pp207-218

東京都大気汚染等保健対策事業にかかる大気調査 ~PM2.5中硫酸アンモニウムの測定~ (地方衛生研究所全国協議会関東甲信静支部・理化学研究会)

三次喫煙による有害化学物質の曝露経路に関する基礎的検討 (日本公衆衛生学会)

固相吸着/溶媒抽出法によるTVOC試験法の検討 (全国衛生化学技術協議会)

シリコンシーラント由来の2-ブタノンオキシムの発生に及ぼす温湿度の影響 (室内環境学会)

★室内環境における酢酸及びギ酸の発生源に関する調査 (室内環境学会)→研究年報2018

新築ビルにおける未規制化学物質に関する現状 (建築物環境衛生管理全国大会)

 

【2017年度】

化学物質による室内空気汚染の近年の状況について (都薬雑誌 Vol.39, No.10, pp.22-26)

新築ビルにおける室内空気中2-エチル-1-ヘキサノールの実態調査 -経時変化と低減化についての考察- (クリーンテクノロジー Vol.27, No.10, pp.58-61)

 ●新築ビルにおける室内空気中有機酸類およびアルデヒド類の実態調査 (クリーンテクノロジー Vol.27, No.10, pp.62-65)

居住環境における酢酸及びギ酸の発生源に関する調査 -合板及び接着剤- (室内環境学会)

溶媒抽出法を用いたTVOC測定法の検討 (室内環境学会)

固相吸着/溶媒抽出法を用いたTVOC分析における湿度の影響 (地方衛生研究所全国協議会関東甲信静支部・理化学研究会)

PM2.5中の硫酸アンモニウム分別定量法の開発 (地方衛生研究所全国協議会関東甲信静支部・理化学研究会)

 

【2016年度】

シリコンシーラント由来の2-ブタノンオキシムによる室内空気汚染 (室内環境学会誌 Vol.19, No.2, pp.131-137)

石英繊維フィルターの粒子捕集効率とフタル酸エステル類の粒径分布 (室内環境学会)→研究年報2018

新築ビルにおける室内空気中2-エチル-1-ヘキサノールの実態調査 (室内環境学会) →クリーンテクノロジー Vol.27, No.10, pp.58-61

新築ビルにおける室内空気中有機酸類及びアルデヒド類の実態調査 (室内環境学会) →クリーンテクノロジー Vol.27, No.10, pp.62-65

★新築ビル室内空気から検出された化学物質についての調査 (地方衛生研究所全国協議会関東甲信静支部・理化学研究会) →研究年報2016

★DNPH誘導体化-HPLC法を用いた空気中アルデヒド類分析において検出された未知物質についての考察 (地方衛生研究所全国協議会関東甲信静支部・理化学研究会) →研究年報2016

空気中揮発性有機化合物の分析法の比較 –固相吸着/溶媒抽出法と固相吸着/加熱脱着法について- (地方衛生研究所全国協議会関東甲信静支部・理化学研究会)

 

【2015年度】

線香等から放出される揮発性有機化合物類、アルデヒド類及び有機酸の調査 (室内環境学会誌 Vol.18, No.1, pp.15-25)

ネオ二コチノイド系殺虫剤の大気中への拡散に及ぼす水分、温湿度及び粒子径物質の影響 (日本臨床医学 Vol.24, No.1, pp.37-47)

居住住宅における室内空気中臭素系難燃剤の粒径別測定 (室内環境学会)

シリコンシーラント由来の化学物質による室内空気汚染について-2-ブタノンオキシムの測定- (室内環境学会) →室内環境学会誌 Vol.19, No.2, pp.131-137

シリコンシーラント由来の化学物質による室内空気汚染について-ヒドロキシルアミンの測定- (室内環境学会)

室内空気中高濃度2-ブタノンオキシムの発生源調査 (地方衛生研究所全国協議会関東甲信静支部・理化学研究会) →室内環境学会誌 Vol.19, No.2, pp.131-137

新築ビル内和室における酢酸の発生源調査 -小型セルを用いた放散量測定- (地方衛生研究所全国協議会関東甲信静支部・理化学研究会)

 

【2014年度】

●副流煙を吸着させた布から放散される化学物質 →研究年報2014

ネオ二コチノイドの揮散に及ぼす粒子状物質、温湿度、水分の影響 (臨床環境医学会) →日本臨床医学 Vol.24, No.1, pp.37-47

室内環境中のネオ二コチノイド系殺虫剤及びトリアゾール系木材保存剤の測定 (室内環境学会) →研究年報2015

線香から放出される化学物質の調査 (室内環境学会) →室内環境学会誌 Vol.18, No.1, pp.15-25

 

【2013年度】

●図書館及び保育園における室内空気中化学物質濃度の実態調査 -アルデヒド類,VOC類及びTVOCについて- →研究年報2013

シロアリ駆除剤由来の室内環境中ネオニコチノイド汚染 ―住宅構造との関連― (臨床環境医学会) →研究年報2015

住宅ハウスダスト中の臭素系難燃剤 (室内環境学会)

布に吸着したたばこ煙に関する実験 ―化学物質分析と消臭スプレーの影響について― (室内環境学会)

環境たばこ煙の吸着及び再放散に関する調査 (日本公衆衛生学会)

線香、お香及び蚊取り線香の煙中揮発性有機化合物(VOC)濃度 (地方衛生研究所全国協議会関東甲信静支部・理化学研究会)

  


 

【要旨】

 環境試料中フタル酸ジイソノニル及びフタル酸ジイソデシルの分離定量法

 フタル酸エステル類のフタル酸ジイソノニル(DINP)及びフタル酸ジイソデシル(DIDP)は異性体が多く、ピークの一部が重なり、共通のイオンを持つことから、これらを分離定量するための方法を検討した。

 検討の結果、分析カラムには、長さが15 m、膜厚が0.1 μmの無極性カラムが適当であった。DINPには、異性体の異なる2種の製品(DINP-1及びDINP-2)が流通していることから、ハウスダストを分析したところ、DINP-2が主に検出された。そこで、環境試料の分析にはDINP-2を標準物質として定量することが適当と考えられた(定量用イオン:m/z 293)。また、DIDPについては、ピークの一部がDINP-1と重なり、両者は同じイオンを有する。そこで、DIDPの定量には、m/z 307を定量用イオンとして、DIDPのピークの後ろ半分の面積を用いることにより、DINP-1の妨害を最小限に抑えた定量が可能であった。

 


 2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレート及び2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジイソブチレートのVOCs標準法における石英ウールへの吸着について

 厚生労働省の「シックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会 第21回(2017年4月)」において指針値案が提案された3物質について、既存のVOC標準測定法の一つである固相吸着-溶媒抽出-GCMS法(SE法)を用いた妥当性評価を行ったところ、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレート及び2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジイソブチレートの回収率が低いことが分かった。この原因の一つに、充填剤の上層に充填されている石英ウールに標準物質を添加したため、そのウールに対象物質が吸着したまま、充填剤に移行していないことが推察された。

 そこで、添加回収試験の方法として、標準物質を石英ウールに添加した場合には、石英ウールと充填剤からの回収量を合算、充填剤に直接添加した場合には充填剤からの回収量を算出した結果、いずれの場合においても回収率は89.6%~123%と良好な結果が得られることが分かった。
 また、この2物質は実態調査時にも捕集管内の石英ウールまたはグラスウールに吸着することから、SE法により空気中濃度を測定する際には、充填剤上層のウールも抽出、分析し、濃度を合算する必要があることが分かった。

 


 

東京湾産魚介類中の残留ダイオキシン類濃度推移

 ダイオキシン類は、催奇性等の毒性が知られる環境汚染物質である。ヒトの主なダイオキシン類摂取源は食事であり、日本人では魚介類からの摂取の割合が87.8%を占める(平成29年度)。こうした背景から、東京都では、都民の食の安全性確保のため、平成元年から東京湾産魚介類中ダイオキシン類濃度調査を開始した。

 平成21年度から30年度までで調査した魚種のダイオキシン類残留平均濃度は、ボラが2.6±0.9 pg-TEQ/g-wet、スズキが1.6±0.4 pg-TEQ/g-wet、マアナゴが3.2±0.5 pg-TEQ/g-wet、マコガレイが1.5±0.5 pg-TEQ/g-wet、アサリが0.17±0.1 pg-TEQ/g-wet、ホンビノスガイ(平成28年度以降)が0.18±0.04 pg-TEQ/g-wetであった。

 年度により変動が見られるが、脂肪含有量の高いマアナゴの残留濃度が最も高いことが分かった。

 


 平成30年度東京湾産魚類中のコプラナーPCB汚染源の推察 

 ダイオキシン類は、催奇性等の毒性が知られる環境汚染物質であり、ポリ塩化ジベンゾパラジオキシン、ポリ塩化ジベンゾフラン及びPCBの異性体の一種であるコプラナーポリ塩化ビフェニル(Co-PCB)の総称である。平成30年度における東京湾産魚類中の残留ダイオキシン類濃度は、Co-PCBの占める割合が70%以上と高く、汚染源の推察のため、異性体割合を確認した。

 その結果、全魚類において、5塩化物である#118と#105の2種の異性体が総Co-PCB濃度の85%以上を占めていた。魚類の異性体割合をPCB含有製品及び燃焼性排出ガスのCo-PCB異性体割合と比較したところ、一部のPCB含有製品の割合と類似しており、平成30年度の東京湾産魚類中残留Co-PCBは、過去に使用されていたPCB含有製品が主な汚染源であると推察した。

 この傾向は平成29年度以前と同様であった。→研究年報2019

 


 

  大気PM2.5中の硫酸アンモニウム分別定量法の開発 

PM2.5中硫酸アンモニウム及び硫酸水素アンモニウムの分別定量法 

 

 硫酸アンモニウムはPM2.5の主な成分の1つであるが、現行のイオン成分測定法では、硫酸アンモニウムを直接定量することは難しい。そこで、PM2.5中硫酸アンモニウムの分別定量法を確立することを目的として検討を行った。

 方法は、PM2.5中に存在すると考えられる4種のアンモニウム塩、すなわち、硫酸アンモニウム、硫酸水素アンモニウム、硝酸アンモニウム及び塩化アンモニウムを石英繊維フィルターに固着させたものを試料として、加熱処理による分別定量法を検討した。

 その結果、110℃、30分間の加熱処理により、硝酸アンモニウム及び塩化アンモニウムはフィルターから消失した。更に、150℃、30分間の加熱では、硫酸アンモニウムがNH4の半量を失うことが判明した。以上より、PM2.5を110℃及び150℃で30分間加熱した場合、150℃の加熱によって110℃の加熱時よりも減少したNH4は硫酸アンモニウム由来であり、この濃度を測定することにより、硫酸アンモニウム濃度を把握することが可能と考えられた。

 


 

東京都大気汚染等保健対策事業にかかる大気調査 ~PM2.5中硫酸アンモニウムの測定~ 

 

 平成29年4月~平成30年3月に、都内の一般環境大気測定局(以下、一般局)3か所(中野区若宮、町田市金森、中央区晴海)及び自動車排排出ガス測定局(以下、自排局)3か所(京葉道路亀戸、日光街道梅島、環七通り松原橋)において、毎月7日間、大気を採取し、PM2.5中の硫酸アンモニウム濃度を測定した。

 硫酸アンモニウムの検出率は100%であり、1年間の濃度平均値は一般局平均:2.0±0.86 μg/m3、自排局平均:2.2±0.90 μg/m3で、一般局よりも自排局の方が有意に高かった(p<0.05)。月別推移では、硫酸アンモニウム濃度は、5月、6月に高い傾向がみられた。

 大気汚染物質との関連では、主にPM2.5、SPM及びSO2濃度と、硫酸アンモニウム濃度との間に有意な相関がみられた。気象要素との関連では、風速及び降水量との間に有意な負の相関がみられた。本研究により、都内大気PM2.5中の硫酸アンモニウムの実態が初めて明らかになった。

 


 

三次喫煙による有害化学物質の曝露経路に関する基礎的検討

 

 三次喫煙の曝露経路について調査するための基礎的実験として、種類の異なる試験体に副流煙を吸着させ、1)有害物質の再放散が確認されるか、2)吸着から時間が経過しても再放散されるかの2点について実験を行った。

 方法は、試験体(壁紙、デニム及びファー)を入れたビニル製チャンバー(約175 L)内で副流煙を発生させ、約20分間、試験体に副流煙を吸着させた。次に、吸着直後の試験体または室内(約20℃)で1時間自然放散させた試験体を空気採取用バッグに入れ、乾燥空気を封入し、約1時間、20℃または40℃で静置後、バッグ内空気中の化学物質濃度を測定した。

 各試験体について、副流煙吸着直後から1時間再放散させた場合の再放散物質を測定した結果、ニコチン及び3-エテニルピリジンの他、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、トルエン、ベンゼン等の有害物質が検出された。

 副流煙吸着後の試験体を室内で1時間自然放散させた後、20℃で1時間再放散、または40℃で1時間再放散させた場合の放散物質を測定した結果、いずれの条件においてもホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、トルエン、ベンゼン等の有害物質が検出され、温度が高い方が再放散量は多いことが分かった。

 


 

固相吸着/溶媒抽出法によるTVOC試験法の検討 

 

 固相吸着-溶媒抽出-GCMS法を用いたTVOCの測定において、一般的に用いられる捕集管(活性炭系吸着剤)を用いた場合、高湿度条件下で、計8物質(スチレン、クロロホルム、ノナナール、デカナール、ブタノール、2-エチル-1-ヘキサノール、テキサノール、ナフタレン)の回収率が低いことが確認された。そこで、これら8物質の回収率を向上させるため、抽出溶媒の検討を行った。方法は、抽出溶媒にアセトン(0、5、10、20、50%)/二硫化炭素混合溶液を用いて、添加回収試験を行った。

 試験の結果、アルコール類は、抽出溶媒のアセトン含有率が高くなるにつれて、回収率は向上した。一方、スチレン、クロロホルム、ノナナール及びデカナールの回収率は、アセトン含有率が0%と5%とを比較すると5%の方が10%程度高くなった。しかし、アセトン含有率が10%以上になると次第に低下した。

 以上の結果から、高湿度条件下で捕集した空気試料の分析において、抽出溶媒の二硫化炭素に対し、5%のアセトンを混合させ抽出する方法は、より多くの物質の回収率を向上させることが分かった。

 


 

シリコンシーラント由来の2-ブタノンオキシムの発生に及ぼす温湿度の影響

 

 都内新築ビル室内空気から検出された2-ブタノンオキシムは、建材の一種であるシリコンシーラントから発生することを確認したが、発生に及ぼす温湿度の影響は知られていない。そこで、チャンバー内の温湿度を4条件(条件1:28℃・70%、条件2:28℃・20%、条件3:20℃・70%、条件4:20℃・20%)設定し、放散状況を調べた。

 調査の結果、2-ブタノンオキシム濃度は高温多湿の条件1(28℃・70%)では、シリコンシーラント塗布後1~2時間で最大となり、その他の条件では4~5時間で最大となった。今回設定した4条件で最も高濃度となったのは、条件3(20℃・70%)の18.3 mg/m3で、また条件1の18.1 mg/m3もほぼ同程度であり、温度に関わらず、湿度が高い時に放散が多い傾向にあった。このことから、室内が多湿条件となる夏季にシリコンシーラントを使用した直後は、2-ブタノンオキシムが高濃度となる可能性が示唆される。

 


  

新築ビルにおける未規制化学物質に関する現状

 

 新築ビルにおける未規制物質(厚生労働省による指針値が設定されていない物質)の現状を把握するため、竣工直後の新築ビル内室内空気を築後3か月から2年10か月まで経時的に調査し、特に濃度が高かった物質については原因の推測を行った。

 VOC類、アルデヒド類及び有機酸類、計76物質を対象とし調査した結果、のべ54物質が検出され、そのうち未規制物質は46物質であった。 

 発生源の推定を行ったのは、2-エチル-1-ヘキサノール(最大値500 μg/m3以上、築後2年10か月時に最大値を検出)、酢酸(最大値150 μg/m3以上、築後1年11か月)、ヘキサン(最大値4000 μg/m3以上、築後3か月)、2-ブタノンオキシム(最大値3000 μg/m3以上、築後4か月)で、2-エチル-1-ヘキサノールは床材に含まれる可塑剤(フタル酸ジ-2-エチルヘキシル)の加水分解、酢酸は木質建材由来と推測、ヘキサン及び2-ブタノンオキシムは工事や作業に伴う一時的な発生であった可能性が考えられた。

 


  

化学物質による室内空気汚染の近年の状況について

 

 1990年代、シックハウス症候群が社会問題となり、国は室内濃度の指針値設定や建築基準法の改定などの対策を行った。その結果、対策が行われた物質については、新築住宅の室内濃度が低下したが、シックハウスは依然として無くなっていない。ホルムアルデヒドはシックハウス症候群の原因物質であり、建材については対策が進んでいるが、家具や備品については未だにホルムアルデヒドを放散する製品がある。また、この10年間に新聞等で報道のあった、学校などにおけるシックハウス事例をみると、ほとんどの場合、原因物質が特定されていない。2007年に北海道の小学校で起こった事例では、1-メチル-2-ピロリドン及びテキサノールが原因物質であり、これらは指針値の定められていない未規制の物質である。

 厚生労働省は、現在、「シックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会」で、新たな指針値の設定と既存の指針値の見直しを進めている。こうした動きは今後も継続すると考えられるが、指針値が設定された物質は使用されなくなり、代替の物質へ移行する傾向がある。

 空気中の化学物質の多くは、ヒトには臭気として感じられることから、室内で何らかの不快な臭気がある場合は、積極的な換気を行い、健康で快適な室内環境を維持するよう心掛けることが必要である。

 


 

居住環境における酢酸及びギ酸の発生源に関する調査 -合板及び接着剤-

 

 近年の居住環境における室内空気質のデータを得るため、都内の住宅10軒において、室内空気中化学物質調査を行ったところ、酢酸及びギ酸が比較的高濃度で検出された。発生源を推察するため、合板及び酢酸ビニル樹脂系接着剤からの放散実験を行った。

 その結果、酢酸及びギ酸のそれぞれの最大放散速度は、合板では1,165 µg/m2/h及び133 µg/m2/h、酢酸ビニル樹脂系接着剤では、それぞれ2,947 µg/m2/h及び10.6 µg/m2/hであった。このことから、酢酸及びギ酸は、合板・酢酸ビニル樹脂系接着剤双方が発生源となると考えられた。

 


 

溶媒抽出法を用いたTVOC測定法の検討

固相吸着/溶媒抽出法を用いたTVOC分析における湿度の影響

 

 固相吸着-溶媒抽出-GCMS法(溶媒抽出法)を用いたTVOC測定法について、複数の捕集管を用いた添加回収試験を実施した。捕集管は、ヤシガラ活性炭2種、球状活性炭2種及び樹脂系捕集管(アンバーライトXAD-7)1種の、計5種を用いた。添加回収試験は、各捕集管に標準物質(計44VOC)を添加し、0.1 L/minで24時間、清浄空気を通気した。通気後の捕集管は、二硫化炭素(活性炭系)またはジクロロメタン(樹脂系)で抽出し、GCMS分析を行った。なお、通気に用いた清浄空気は、相対湿度30%、50%及び80%に調整した。

 試験の結果、いずれの捕集管においても、高湿度の条件下では回収率が低下する物質数が増えることが分かった。また、樹脂系捕集管より活性炭系捕集管の方が、回収率が良好な物質数は多いが、なかには、樹脂系捕集管の方が良好な物質が見られた。したがって、多くのVOCを網羅的に測定する方法として、活性炭系捕集管と樹脂系捕集管を併用する方法が考えられた。

 


 

PM2.5中の硫酸アンモニウム分別定量法の開発

 

 PM2.5中の硫酸アンモニウム((NH4)2SO4)について、現行のイオン成分測定法では、PM2.5の抽出液をイオンクロマトグラフで測定するため、硫酸アンモニウムそのものを定量することは難しい。そこで、本研究では硫酸アンモニウムの分別定量法を検討するとともに、大気中濃度の実態を調査した。

 各種塩のなかから、硫酸アンモニウムのみを分別する方法として、各塩の物理化学的性状を利用した加熱処理条件の検討を行った。複数のアンモニウム塩(硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、塩化アンモニウム)を石英繊維フィルターに添加し加熱した結果、110℃で30分間加熱することで、硝酸アンモニウム及び塩化アンモニウムは消失し、硫酸アンモニウムのみ残存することが分かった。

 この結果から、加熱処理条件は110℃で30分間とし、硫酸アンモニウム濃度については、得られたアンモニウムイオン濃度より硫酸アンモニウムの式量を用いて算出した。

 この方法を用い、当センターの屋上で採取したPM2.5中の硫酸アンモニウム濃度を測定した結果、硫酸アンモニウム濃度は10月:2.5 μg/m3、11月:2.1 μg/m3、12月:1.2 μg/m3であった。

 


 

シリコンシーラント由来の2-ブタノンオキシムによる室内空気汚染

 

 新築ビルの7室(A-G)を対象とし、室内空気中揮発性有機化合物濃度を調査した結果、これまで室内空気からの検出報告が少ない2-ブタノンオキシムについて、A室から高濃度(3,570 µg/m3)で検出された。A室内においては調査前日に洗面台設置工事が行われており、この時使用された建材等が原因となった可能性が考えられた。そこで、発生源調査を行ったところ、洗面台周りのシーリング材塗布面から2-ブタノンオキシム及び2-ブタノン(2-ブタノンオキシムの加水分解生成物)の放散が確認された。したがって、2-ブタノンオキシムの発生源は、工事で使用されたシリコンシーラント由来であると判断された。

 


 

石英繊維フィルターの粒子捕集効率とフタル酸エステル類の粒径分布

 

 空気中のフタル酸エステル類測定法検討のため、6種のサンプラーを用いて、室内で同時にサンプリングを行った。用いたサンプラーは、石英繊維フィルターとODSフィルターを組み合わせたサンプラーが3種、ODSフィルターのみが1種、カートリッジ型サンプラーが2種であった。

 その結果、6種のサンプラーから得られたフタル酸エステル類濃度は、いずれも同程度であった。また、石英繊維及びODSフィルターを組み合わせたサンプラーにおいて、捕集されたフタル酸エステル類の濃度を100とし、石英繊維フィルターで捕集された割合を算出すると、フタル酸ジエチル(DEP)については石英繊維フィルターの種類で違いが見られ、粒子捕集効率の公称値が高い方が、DEPの捕集割合が高かった。一方、フタル酸ジ-2-エチルヘキシル(DEHP)では、いずれのサンプラーでも、すべてが石英繊維フィルターに捕集されていた。室内空気中フタル酸エステル類の粒径分布を測定したところ、DEHPは、石英繊維フィルターで捕集可能な粒径範囲に分布していることが判明した。  

 


 

新築ビルにおける室内空気中2-エチル-1-ヘキサノールの実態調査

 

 新築ビルの4室(A-D)を対象とし、使用開始前(1月)から使用後15か月(翌年5月)までの約1年半の間、約2か月ごとに室内空気中2-エチル-1-ヘキサノール(2E1H)濃度の測定を行った。

 その結果、4室全てから2E1Hが検出され、A、B及びD室で濃度と室温及び濃度と相対湿度との間で、統計的に有意な正の相関が見られた。同種の床材(カーペット)を使用したA及びB室における2E1H濃度(最大値)は約6倍の差が見られた(A>B)。そこで床材の下の構造を調査したところ、A室では床材をコンクリートに直貼り、B室では床材とコンクリートの間にボードと空間が存在することが分かった。フタル酸ジ-2-エチルヘキシル等の可塑剤を含む床材をコンクリートへ直貼りすることが、2E1Hの生成を促進することから、2E1Hの発生を抑制する対策の一つとして、B室のような二重床構造が有効であると考えられた。

 


 

新築ビルにおける室内空気中有機酸類及びアルデヒド類の実態調査

 

 新築ビル室内7部屋(A-G)及び外気において、計77物質を対象とし、1年間の定期的な空気質調査を行った。その結果、酢酸及びギ酸は7室全てで検出され、年間の検出頻度は100%であった。

 対象の7室のうち、酢酸及びアセトアルデヒドが最高値で検出された部屋A、ギ酸及びホルムアルデヒドが最高値で検出された部屋Bについて、これら4物質の濃度変化及び各物質濃度間の関連を調査した。その結果、4物質の室内濃度は、夏季に上昇し冬季に減少する傾向が見られた。また、部屋A、Bともにホルムアルデヒドと酢酸、ホルムアルデヒドとギ酸及び酢酸とギ酸の濃度間に有意な正の相関が見られた。これら4物質について、各部屋の室内濃度と外気濃度の比(I/O比)を算出した結果、各物質の平均値は3.9~17.5で、いずれの物質についても発生源は室内に存在することが推察された。

 


 

空気中揮発性有機化合物の分析法の比較 –固相吸着/溶媒抽出法と固相吸着/加熱脱着法について-

 

 室内空気中化学物質濃度の指針値については、現在、新たな化学物質についての指針値設定が検討されている。そこで本実験では、今後、指針値が設定される可能性の高い2-エチル-1-ヘキサノール(2E1H)及びナフタレンについて、固相吸着/溶媒抽出法と固相吸着/加熱脱着法の比較を行った。

 溶媒抽出法では、Orbo91(方法A)、Orbo615(方法B)及びチャコール(方法C)の3種の捕集管を、加熱脱着法では、TenaxTA(方法D)及びCarboxen1016(方法E)2種の捕集管を用い、添加回収試験を行った。その結果、方法B、D及びEでは、2E1H及びナフタレンの両物質について、良好な添加回収率が得られた。一方、方法A及びCでは両物質とも添加回収率が40%未満と低かった。

 


 

線香等から放出される揮発性有機化合物類、アルデヒド類及び有機酸の調査

 

 市販の線香12製品について、燃焼時に放出される化学物質を調査した。製品の内訳は、棒状の線香8製品、コーン型のお香2製品及び蚊取線香2製品で、お香は外国製品(インド)、お香以外は国産品であった。

 その結果、検出された化学物質はのべ48物質で、アセトアルデヒド、イソプレン、酢酸、アクロレイン及びベンゼン等の放出量が多かった。調査対象の線香を、容積20 m3、換気回数0.5回/時の室内で1時間燃焼させた後の空気中濃度を推定した結果、主な物質の濃度範囲は、アセトアルデヒドが22~160 μg/m3、アクロレインが5.4~70 μg/m3、ベンゼンが11~77 μg/m3であった。

 


 

ネオ二コチノイド系殺虫剤の大気中への拡散に及ぼす水分、温湿度及び粒子径物質の影響

 

 ネオニコチノイド系殺虫剤は、住宅のシロアリ駆除に使用された場合、床下から拡散し、室内を汚染することが報告されている。そこで、ネオニコチノイドの拡散に水分、温湿度及び粒子状物質が及ぼす影響を調査するため、2つのモデル実験を行った。

 屋外散布のモデル実験では、土壌の代替に石英繊維フィルターを用い、4種のネオニコチノイドを添加して屋外に3日間静置した。その結果、降雨を想定して、フィルターに少量の蒸留水を加えたものでは、薬剤残存率が有意に低下した。床下散布のモデル実験では、薬剤添加フィルターを異なる温湿度条件下に4週間静置したところ、高温乾燥の条件では薬剤残存率が低かった。また、粒子状物質を除去した空気と、除去しない空気で比較したところ、除去しない方が薬剤残存率が低かった。

 したがって、ネオニコチノイドの大気中への拡散は、散布場所の水分の蒸発によって促進され、高温乾燥及び粒子状物質によって促進されると考えられた。

 


 

居住住宅における室内空気中臭素系難燃剤の粒径別測定

 

 臭素系難燃剤は汎用性があることから、電化製品等に広く用いられている。今回は、住宅室内の臭素系難燃剤濃度を把握することを目的として、平成25年度及び平成26年度に、北海道から沖縄までの全国の住宅で、室内空気の調査を行った。調査は、平成25年度は21軒、平成26年度は50軒で行い、空気採取は1軒あたり1室で、主に居間で行った。

 調査対象11物質のうち、平成25年度には6物質、平成26年度には5物質が検出された。検出率が高かったのはトリブロモフェノール(TBPh)で、両年度とも100%であり、次いでヘキサブロモベンゼンの検出率が高かった(平成25年度33%、平成26年度68%)。最も濃度が高かったのは、TBPhで10.8 ng/m3であった。次に、建築様式について情報が得られた住宅について、2年度分の測定結果を戸建住宅と集合住宅に分けてTBPh濃度の中央値を比較した。その結果、戸建(n=45)0.52 ng/m3、集合(n=22)1.1 ng/m3と、集合住宅の方がTBPh濃度が高い傾向がみられた。

 


 

 シリコンシーラント由来の化学物質による室内空気汚染について-ヒドロキシルアミンの測定-

 

 空気中ヒドロキシルアミンの測定法について、ヒドロキシルアミンをアセトンによってアセトオキシムに反応させた後、GC/MSで分析する方法を検討した。

 アセトオキシム化は、インピンジャーを用いる方法と、今回作成したオキシム化カラムを有するサンプリングデバイスを用いる方法を検討し、いずれの方法においても添加回収率は80%以上であった。アセトオキシムの分析については、トリメチルシリル化の有無で比較した結果、トリメチルシリル化した方が、定量下限値は小さくなったが、誘導体化試薬の分解生成物により内部標準物質(ナフタレン-d8)が妨害される可能性があることが分かった。

 


  

新築ビル内和室における酢酸の発生源調査 -小型セルを用いた放散量測定-

 

 新築ビル内和室において、高濃度に検出された酢酸の発生源調査を行った。調査は、畳の上、畳の継目及び板の上に非密閉型の小型セルを設置し、約2.7時間後、セル内に設置した捕集管を回収、分析した。

 その結果、畳の継目からの放散量が最も多く、畳の下に発生源が存在することが示唆された。近年、合板の製造には、酢酸ビニル樹脂系接着剤(酢ビ接着剤)が使われており、硬化した酢ビ接着剤の加水分解により酢酸が発生することが知られている。これらの事から、酢酸の発生は、畳の下の構造合板に使用された酢ビ接着剤が原因と推測された。

  


 

ネオ二コチノイドの揮散に及ぼす粒子状物質、温湿度、水分の影響

 

 ネオニコチノイド系殺虫剤は農薬の他、住宅のシロアリ駆除剤として多用されている。蒸気圧が極めて低いことから、ほとんど揮散しないと考えられているが、その詳細については明らかになっていない。そこで、ネオニコチノイド系殺虫剤の揮散に及ぼす粒子状物質、温湿度及び水分の影響について検討した。

 土壌の代替として石英繊維フィルターを用いてモデル実験を行った結果では、ネオニコチノイドの大気中への揮散は、粒子状物質及び高温乾燥条件によって促進されることがわかった。また、薬剤散布場所に水分が含まれている場合、水分の蒸発に伴って、ネオニコチノイドの揮散が促進されることがわかった。

 


 

室内環境中のネオ二コチノイド系殺虫剤及びトリアゾール系木材保存剤の測定

 

 近年、揮発性の低いネオニコチノイド系殺虫剤(以下ネオニコチノイド)がシロアリ駆除に多用されている。シロアリ駆除剤には殺虫剤以外に木材保存剤が配合されており、ネオニコチノイドとの組み合わせでは、トリアゾール系のシプロコナゾールが多く用いられている。そこで、これらの薬剤による室内環境中の汚染状況を把握することを目的として測定法を確立し、住宅の調査を行った。

 調査した5軒の住宅では、3軒はイミダクロプリド、2軒はクロチアニジンを使用していた。室内空気では、イミダクロプリドによる駆除を行った住宅3軒中1軒、クロチアニジンによる処理を行った住宅2軒中2軒で、それぞれが使用したネオニコチノイドが検出された。また、シプロコナゾールは5軒中2軒の室内空気から検出された。ハウスダストでは、すべての住宅からネオニコチニノイドが検出され、シプロコナゾールは5軒中4軒から検出された。これらの薬剤は蒸気圧が低いが、床下から室内に侵入し、室内を汚染している現状が明らかとなった。

 


 

線香から放出される化学物質の調査

 

 市販の棒状線香8製品について、燃焼時に放出される化学物質を調査した。製品会社は全て国内メーカーで、5製品は仏壇用、3製品はお墓参り等の屋外用であった。

 その結果、大気中及び室内空気中の基準値等が設定されている物質(ベンゼン、ホルムアルデヒド及びアセトアルデヒド等)を含む48物質が検出された。同一銘柄で煙の量(製品に表示)が異なる製品の化学物質放出量を比較した結果、煙の量が少ない製品の方が放出量は少なく、特にホルムアルデヒド及び酢酸の減少率が大きかった。

 


 

シロアリ駆除剤由来の室内環境中ネオニコチノイド汚染 ―住宅構造との関連―

 

 ネオニコチノイド系殺虫剤(以下、ネオニコチノイド)を有効成分とするシロアリ駆除剤は、低臭で長期間有効な薬剤として、近年多用されている。しかし、それらの薬剤による室内汚染については報告が少ない。そこで本研究では、ネオニコチノイドを用いてシロアリ駆除を行った2軒の木造住宅において、室内空気中及びハウスダスト中のネオニコチノイド濃度を測定し、住宅構造との関連について考察を行った。調査を行った住宅の概要は、住宅A:クロチアニジン使用、2012年3月調査(薬剤散布後3年7ヵ月経過)、外張り断熱工法、住宅B:イミダクロプリド使用、2012年7月調査 (薬剤散布後6ヶ月経過)、在来工法であった。

 調査の結果、住宅Aでは、床下空気(3.1 ng/m3)、室内空気(0.66~1.1 ng/m3)及びハウスダスト(0.16~0.31 μg/g)からクロチアニジンが検出された。住宅Bでは、床下空気(0.81 ng/m3)及びハウスダスト(0.035~0.036 ng/g)からイミダクロプリドが検出されたが、室内空気からは検出されなかった。2軒の住宅について、床下と1階の空気中濃度を比較すると、住宅Aでは1階空気/床下空気の濃度比が0.35であったのに対し、住宅Bでは0.01以下であった。

 この違いの原因としては、住宅構造の違いが考えられ、住宅Aは外張り断熱工法の家で、外壁と内壁の間に通気層があることから、通気層を通って、床下に散布されたネオニコチノイドが室内に侵入しやすいものと推察された。

 


 

住宅ハウスダスト中の臭素系難燃剤

 

 難燃剤は家電製品、繊維製品、建材等の難燃化に広く用いられているが、臭素系難燃剤のヘキサブロモシクロドデカン(HBCD)は、2013年7月に「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」の第一種特定化学物質に指定された。そこで本研究では、主な臭素系難燃剤11種について、住宅のハウスダスト濃度を測定し、HBCD濃度が最も高かった住宅において発生源調査を行った。

 ハウスダストの測定では、デカブロモジフェニルエーテル(BDE-209)の検出率が100%、次いでHBCDの検出率が75%と高く、濃度中央値はそれぞれ0.18 μg/g、0.17 μg/gであった。また、濃度最大値はBDE-209が2.5 μg/g、HBCDが24.7 μg/gであり、これら2物質の最大値は同じ住宅で検出された。そこで当該住宅において、発生源調査を行ったところBDE-209はビニルレザー製のソファ、HBCDはカーテンが主な発生源であることが判明した。 

 


 

布に吸着したたばこ煙に関する実験 ―化学物質分析と消臭スプレーの影響について―

 

 三次喫煙に起因する有害物質の暴露低減法を検討するための基礎的実験として、環境たばこ煙を吸着させた布(衣類を想定)から再放散される化学物質について、消臭スプレーの影響を調査した。消臭スプレーは衣類用の3製品を用い、使用方法に従って副流煙を吸着させる前または吸着させた後の布(約20×30 cm、ウール地)にスプレーした。布はチャンバーに入れ、副流煙を約20分間吸着させた後、空気採取用バッグに移し、乾燥空気約20Lを封入、約2時間室温で放置し、バッグ内空気を採取して分析を行った。

 分析の結果、主に検出されたのは20物質で、20物質濃度合計値は、消臭スプレーを使用しない対照と比べ、スプレーを使用した場合では1/2~2倍となり、製品によって違いが見られた。ニコチン濃度については全ての場合で対照よりも低くなった。

 


 

環境たばこ煙の吸着及び再放散に関する調査

 

 三次喫煙の実態を調査するための基礎的実験として、環境たばこ煙を吸着させた布(衣類を想定)から再放散される化学物質についての調査を行った。素材及び表面形状の異なる布12種類を対象とし、チャンバー内で副流煙を約20分間吸着させた後、吸着させた布を別の空気採取用バッグに移し、乾燥空気約20Lを封入、1~2時間室温で放置させ、バッグ内空気を採取・分析した。

 分析の結果、主に検出されたのは、ニコチン、3-エテニルピリジンの他、アルデヒド類10物質及びVOC類11物質の合計23物質で、検出物質数が多かったのはフェイクファー及びタオル地の布で(20物質)、最も少なかったのはシルク(3物質)であった。シルクは23物質濃度合計値も最小で、最大を示したフェイクファーの約1/22であった。

 


 

線香、お香及び蚊取り線香の煙中揮発性有機化合物(VOC)濃度

 

 シックハウス症候群に関連する化学物質の発生源として、建材や家具が知られているが、その他には日用品の寄与があげられる。線香は室内で使用される日用品のひとつであるが、燃焼時に発生する化学物質については報告が少ない。そこで、今回は線香、お香及び蚊取り線香の燃焼時に放出される揮発性有機化合物について調査した。試料は、棒状の線香は杉線香3製品とタブ線香3製品、円錐形のお香2製品及び渦巻き状の蚊取り線香2製品の計10製品を用いた。各試料に火をつけてガラス筒内で燃やし、空気を送って煙をテドラーバッグに採取した。次にテドラーバッグ内の煙を捕集管に採取して、GC/MSにより分析した。

 試料1gあたりから、燃焼によって放出された揮発性有機化合物の総量は、蚊取り線香が最も多く(25.2 mg/g)、円錐形お香(5.4 mg/g)が最も少なかった。各試料から共通して放出された物質は酢酸、イソプレン、2-メチルフラン、ベンゼン等であった。ベンゼンは発ガン物質であり、環境基準(3 μg/m3)が定められていることから、線香を室内で1時間燃焼させた後の室内ベンゼン濃度を推計した。大気中ベンゼン濃度を1.1 μg/m3とし、6畳の部屋を想定して計算した結果、室内濃度は5.4~31.3 μg/m3となり、いずれも環境基準を超える結果であった。そのため線香、お香、蚊取り線香を使用する際は、なるべく短時間に抑え、使用後の十分な換気が必要と考えられた。

 


 

 

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