バンコマイシン耐性腸球菌(VRE: Vancomycin Resistant Enterococci)は、抗菌薬であるバンコマイシンに耐性を獲得した腸球菌(腸管内に常在する菌)です。
病原性が非常に弱いので、健康な人への危害はほとんどありません。しかし、手術後の患者など免疫力の低下した患者では、腹膜炎や敗血症など重症の感染症を引き起こすことがあります。VREにはほぼ全ての種類の抗菌剤が効かないので、治療に重大な支障をきたすことになります。
VREはバンコマイシン耐性遺伝子の型によりVanA型、VanB型、VanC型などに分類されます。このうち、臨床上問題となっているのが、バンコマイシンに高度耐性を獲得していることが多いVanA型およびVanB型です。食品においては、鶏肉からVREが検出されることがあるため、東京都では鶏肉を対象としてVanA型および VanB型VREの検査を行っています。
都内に流通する鶏肉のうち、2009年から2015年の検査では、VanA型VREが国産鶏肉から1件(0.3%)、ブラジル産鶏肉から9件(3.6%)検出されています。
検体 | 原産国 | 検体数 | VRE検出数 | |
VanA型 | VanB型 | |||
鶏肉 |
日本 |
353 | 1 | 0 |
輸入(うちブラジル産) | 251(207) | 9(9) |
0 |
通常、健康な人はVREに汚染された食肉を食べても健康上の問題が生じることはありません。また、VREは適切な加熱(75℃、1分)により死滅します。このため、鶏肉については、十分に加熱調理してから食べるようにしましょう。
IDWR:感染症の話(バンコマイシン耐性腸球菌感染症)(国立感染症研究所)