身近な水環境におけるレジオネラ属菌の生息状況

(当センターの調査結果から)

1.空調用冷却塔水

2.給湯水

3.修景用水

4.雑用水

5.温泉浴槽水

6.プール水

7.浴槽水

 

1.空調用冷却塔水

 レジオネラの発見のいきさつもあって、都市環境におけるレジオネラ汚染と最も深い関わりがあるのは空調用冷却塔水である。東京都内のビルに設置されている空調用冷却塔から冷却水を採取して調査した。表1に、調査年次ごとの試料数、検出率及び検出菌数の範囲を示す。

 全調査期間を通じてみると、検出された菌数は少ない場合は10CFU/100mL以下であったが、最大値は1,000〜100,000CFU/100mLのオーダーで検出され、検出率は22%から60%まで変動した。この背景には調査定点が異なることもあるが、施設ごとの維持管理にバラツキがあることも推定できる。すなわち、冷却塔のレジオネラ汚染防止対策については法的に強制されたものではなく、施設設置者の自主管理になっているために、レジオネラ汚染防止対策について積極的な施設では定期的な清掃が行われ、検査も定期的に実施している場合が多いが、そうでない施設では清掃や検査などのレジオネラ対策をあまり行っていないことが推測される。レジオネラの検出率は、1996年度以降は30%前後で安定していたが、2000年度は検出率が高かった。
(表1)

 

2.給湯水

 従来、わが国の給湯設備では、給湯温度が60℃以上と高く保持されており、使用時に給水と混合して温度を下げるため、給湯水におけるレジオネラの問題はないと考えられてきた。しかし近年、省エネの気運の高まりや、そのまま使用できる利便性及び火傷の防止といった理由から、給湯温度を下げる傾向にあり、給湯水におけるレジオネラの定着・増殖が危惧される。

 給湯水の調査結果を表2にまとめた。これらの給湯水の湯沸かし方式は、家庭用の瞬間湯沸かし器、電気温水器などの貯湯式温水器及び事務所ビルなどにみられる循環式給湯水である。検出率は1998年度を除いて5〜9%程度と低率であり、検出された菌数は冷却塔水の1/10〜1/100程度であった。このように検出率、菌数ともに比較的小さいものであったが、給湯水の一部はレジオネラに汚染されている事実が明らかとなり、給湯水がレジオネラ症の感染源となり得ることが示唆された。給湯水温との関係では、給湯温度が末端で55℃を越えて温度が維持されている場合、レジオネラはほとんど検出されない。また、循環式あるいは貯湯式の給湯水で検出される一方、瞬間湯沸かし器形式では水道水が短時間に加熱されるため残留塩素が存在しており、給湯水が滞留することもないため、瞬間湯沸かし器形式の給湯水からはレジオネラはまったく検出されなかった。

 病院や老人ホームなどでは大型の給湯設備は特に必須のものであるが、給湯温度を下げた給湯はレジオネラ感染の防止という観点からは危険であり、ひとたび給湯系に定着したレジオネラは長期間生残し増殖することが考えられる。こうしたレジオネラを除去するには貯湯槽の大掛かりな清掃と、給湯温度の上昇が不可欠である。給湯温度を70℃に上げ20時間循環させてレジオネラを除去した例もある。
(表2)

 

3.修景用水

 レジオネラはエアロゾルと共に飛散してヒトに呼吸器系感染するので、エアロゾルが発生する可能性が大きい水環境として、公園や広場、建築物の中庭や屋内などに設けられている噴水や滝(総称して修景用水という)の水について調査した。

 調査結果は表3に示したとおりで、調査した全施設の20%程度にレジオネラが生息していることが判明した。このような水環境に生息しているレジオネラが直ちにヒトに対して健康被害を及ぼすか否かは、レジオネラの飛散実態が判明してない現状では今後の研究課題である。
(表3)

 

4.雑用水

 首都圏や恒常的な水不足問題を抱えている都市では、水資源の有効利用の一環として、雨水、あるいは下水処理水等をさらに高度処理した再生水を便器の洗浄水などに再利用している。こうした雑用水の用途はこれまでは便所洗浄水がほとんどであったが、一部では車両等の洗浄に使用され、さらには修景用水や親水用水にまで用途を拡大する方向にある。こうした用途への雑用水の使用の拡大は、必然的にエアロゾルの発生を伴い、レジオネラ感染の場になる可能性が増大することは避けられない。

 表4に都内の雑用水利用施設で採取した雑用水からのレジオネラ検出状況をまとめた。各年度で調査定点が異なるため、経年的な変化は解析できないが、検出割合、検出菌数ともに少ないものの、雑用水にもレジオネラが生息していることが明らかとなった。したがって、エアロゾルが発生する可能性のある施設や用途に雑用水を使用する場合は、レジオネラ汚染を十分考慮した管理が必要がある。
(表4)

 

5.温泉浴槽水

 レジオネラが生息する水環境として温泉浴槽水がある。温泉浴槽で溺れるなどして浴槽の水を誤飲したことが原因と考えられるレジオネラ症は、全国ですでにいくつも確認されている。

 温泉浴槽水の調査結果を表5に示した。なお調査地域は首都圏に限定していない。調査地点及び調査件数は年度ごとに一定していないが、3割から6割、平均約4割と高い検出率であり、検出菌数では空調用冷却塔水なみに多い例もあった。藪内ら(1994)は、1都12県にわたる40温泉の17カ所(42.5%)からレジオネラを検出している。この結果は表5に示した調査結果とよく一致しており、検出菌数もほぼ同様であった。こうしたことから、温泉浴槽水のレジオネラ汚染はかなり一般的にあるものといえる。この背景には、源泉は高温の温泉であっても、その浴槽水については「24時間風呂」と同様の保温循環ろ過方式で浄化されている施設が増えているためではないかと推察される。
(表5)

 

6.プール水

 プールでの遊泳は必然的にエアロゾルの発生を伴うことから、都内にある室内プールを対象として1997年度と1998年度に合計154件を調査した。内訳は、プール水71件、ジャグジー27件、シャワー水56件であり、調査はおもに1997年に行われた。結果は表6に示したように、レジオネラが検出されたのはジャグジー1件のみであり、その菌数も比較的少なかった。このジャグジーでは残留塩素は検出されなかった。

 都では、遊泳用プール水に対して条例及び規則でろ過による浄化や残留塩素等の確保を含めた水質基準が定められている。すなわち、プール水は条例等に沿ってろ過並びに消毒等の管理が適正に行われていれば、レジオネラは効率よく除去・消毒され、レジオネラ汚染を防止できるものと推測される。
(表6)

 

7.浴槽水

 保温循環式浴槽、いわゆる「24時間風呂」の水質浄化機構は、浄化に有効な微生物をろ過材に繁殖させ、ろ過材による懸濁物質の抑留とそれらの微生物の補食及び酸化分解機能を利用して浴槽水を浄化するものである。このような浄化システムで浄化した浴槽水は、水の微生物汚染指標である「一般細菌」及び「大腸菌群」を飲料水なみに低減させることが出来る。しかし、レジオネラはこれらの細菌が抑制される浄化システムの中で、ろ過材に捕捉された有機物や他の微生物を利用して増殖し、浴槽水を著しく汚染した。しかも、指標細菌ではないため水質評価の対象となっておらず、測定されていなかった。

 このような背景をもとに、著者らは、数年間にわたって浴槽水のレジオネラ汚染調査を精力的に行ってきた。調査対象となった浴槽水は1995年度から2000年度までに総数894件にのぼっている。内訳は、家庭用のいわゆる「24時間風呂」、家庭用の毎日全換水する風呂、特別養護老人ホーム等の施設のいわゆる「24時間風呂」や毎日全換水する風呂、公衆浴場などである。

 調査結果は表7にまとめた。調査結果を概略的にみると、毎日全換水する普通の風呂の浴槽水からは、家庭用、特養施設ともにレジオネラは検出されなかった。しかし、「24時間風呂」や循環式浴槽水では高率(31.8%〜85.7%)にレジオネラが検出され、検出菌数の最大値は330万CFU/100mLであった。この結果から、いわゆる24時間風呂では高い割合でレジオネラが存在しており、また菌数も著しく多い場合があるので、レジオネラへの暴露をなるべく避けるため、こうした浴槽水をジェトバスで使用したり、シャワーに使用するなどエアロゾルが発生しやすい使用方法は避けたほうが望ましいといえる。またレジオネラが繁殖しないように、浴槽やろ過器をこまめに洗浄し、消毒を怠らないように十分管理する必要がある。
(表7)

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