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食品中に残留する抗生物質の検査
 

1 抗生物質について
 抗生物質とは微生物等によって作られて、自分以外の微生物の発育を阻止する作用のある物質をいいます。例えば、世界初の抗生物質は、1928年にイギリスの細菌学者フレミングにより発見されたペニシリンで、アオカビから作られました。また、微生物が作るものだけではなく抗生物質と同一の化学構造ないしはその誘導体を、人間の手により化学的に合成したものもあります。
 抗生物質が残留する可能性がある食品は、主に乳、食肉、養殖魚、鶏卵など(畜水産食品といいう)です。家畜の病気の治療や、あるいは成長促進のために飼料添加物として投与されたものが残留することがあるためです。
家畜の治療や飼料添加物として使用される抗生物質は、使用法について法律で厳しく定められているため、法律どおりに使用すれば残留することはありません。しかし、法律に定められていない方法で使用すると、畜水産食品に残留することがあります。そのため、残留基準値(許容される限度値)が設定され、基準値以上に食品中に残留している場合には、食品衛生法違反となり、回収措置などがとられます。違反事例では、日本国内では想定できないような抗生物質の使われ方をした輸入品(日本では家畜の治療薬として使用されており、はちみつへの使用が禁止されている抗生物質のストレプトマイシンがはちみつから検出された。)の例があります。



2 抗生物質の検査法
 畜水産食品中に残留する抗生物質の検査には、微生物学的方法と理化学的方法があります。微生物学的方法は抗生物質に感受性の高い細菌を用いた測定法※で、簡易かつ低コストで試験できるためスクリーニング法として汎用性が高いものです。理化学的方法は、分析機器を用いた測定法で、薬剤の成分を調べたり(定性)、成分の量を調べたり(定量)するのに優れています。当センターではこれらの方法を併用して検査を行っています。
 検査は、初めに、微生物学的方法でスクリーニング検査(選別試験)を行います。このスクリーニング検査で陽性となった場合、次に、理化学的方法で再度検査を行います。これにより抗菌活性を示した薬剤を決定し、薬剤の量を求めています。
 ※平成6年の厚生省(現厚生労働省)の通知にある「畜水産食品中の残留抗生物質簡易検査法(改訂)」及び「畜水産食品中の残留抗生物質の分別推定法(改訂)」に基づいています。



3 微生物学的方法の検査手順
 微生物学的方法に用いる試験菌は主にミクロコッカスルテウス、バチルスサブチルス、バチルスマイコイデスという3種類の細菌で、これらの試験菌液を培地に混合して検査用の寒天平板を作製します。試料を抽出溶液を用いて抽出し(含まれている抗生物質を溶液等に溶かし込むこと)、そのままの液か濃縮操作をしたものを円形のろ紙に浸み込ませ、これを一試験溶液につき2枚、検査用平板にそれぞれ置いて培養します。試験溶液に抗生物質が含まれていた場合、ろ紙の周りに細菌が生育できないドーナツ状の部分ができます(阻止円)。この阻止円を形成した場合、抗生物質陽性と判定します。微生物学的方法は、試験菌の感受性パターンから畜水産食品中に残留する抗生物質を系統別に推定可能で、理化学機器による測定法と比較して、低コスト、簡易で、迅速な試験法です。


試験菌の感受性パターンによる抗菌性物質の推定
培養
培養後、形成された阻止円の直径を測る。
阻止円を形成しないものと12 mm 未満は
陰性(−)、12 mm 以上は陽性(+)と判定する。
陽性(+)  陰性(−)


4 理化学的方法の検査手順
 まず、試料より溶媒(メタノールやアセトニトリル)を用いて抽出(含まれている抗生物質を溶媒中に溶かし込むこと)を行います。抽出液には検査対象となる抗生物質の他に脂肪やタンパク質などの試料に由来する成分も含まれていて、これらの成分は機器を使って分析する際の妨害となるため、抽出液をそのまま分析することはできません。そこで、様々な手法を用いて不要な成分を取り除きます。この操作を精製といいます。精製は抗生物質の化学的特性を見極めた上で最適の方法を選択しますが、高度な化学的知識を必要とする検査員の腕の見せ所でもあります。精製後の試料をそのまま、もしくは濃縮操作をしたものを高速液体クロマトグラフや、質量分析計という分析機器を用いて測定します。これらの機器は抗生物質の種類を調べたり(定性)、残留量を調べたり(定量)することができます。



高速液体クロマトグラフ

質量分析計


5 当センターにおける検査の状況
 当センターでは、平成21年度、食肉類136検体、魚類33検体、鶏卵25検体、蜂蜜20検体、牛乳等102検体、合計316検体について残留する抗生物質の検査を行いました。
 微生物学的方法の結果、食肉4検体からテトラサイクリン系抗生物質、1検体からペニシリン系抗生物質を検出し、理化学的方法によりテトラサイクリン系抗生物質はクロルテトラサイクリン、およびドキシサイクリン、ペニシリン系抗生物質はベンジルペニシリンであることがわかりました。しかし、含有量はいずれも残留基準値より低く、食品衛生法に違反するものはありませんでした。
 健康安全研究センターは都民の食の安全を守るため、これからも残留抗生物質の検査に取り組んでいきます。 

<関連情報>
厚生労働省食品安全情報
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/index.html

厚生労働省違反事例
http://www.mhlw.go.jp/topics/yunyu/ihan/index.html