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微生物を原因とした食品の苦情事例
 

 製造工程で虫や動物の毛などの異物が混入した食品、あるいは消費に至る過程で繁殖した微生物などにより、色や味、臭いがおかしくなった食品が、「苦情品」として保健所に持ち込まれることがあります。健康安全研究センターでは、これら「食品の苦情」について原因究明を行うなど、食品苦情を減らす取り組みを行っています。ここでは食品苦情のうち、当センターで扱った微生物を原因とした事例についてカビを中心に概説するとともに、ご家庭での注意点についても紹介します。

1 微生物による食品苦情事例
1987年から2009年までの23年間、当センターが扱った微生物を原因とした食品苦情は917事例(年間 約40事例)でした。このうち、2002年までの16年間の集計では菓子類の苦情事例が最も多く、次いで嗜好飲料、穀類と続き、これら3つの食品群だけで全体の2/3を超えていました。これに比べ、2003年から2009年までの7年間では、菓子類の割合が大きく低下した一方で、嗜好飲料については約25%と高い割合のままでした(図1)。

↑ 1987−2002(562事例) ↑ 2003−2009(355事例)
図1 当センターで扱った微生物を原因とした苦情事例数(食品別)

 嗜好飲料では、ペットボトルや紙パック容器等、開封した後でもそのまま保存できる形体で販売されているものが増えています。また、お茶やミネラルウォーターなどでは、微生物の発育に適した栄養分が少ないように感じられ、一般的に粗雑な扱いになりがちです。しかし実際は、開封後、家庭の冷蔵庫で保存しているうちにカビが生えてしまうような事例が報告されています。見た目の判断や冷蔵庫を過信せず、表示された方法を守って適切に保存した上で、一度開封したものはなるべく早く消費してください。



2 特徴的な苦情事例
当センターで扱った特徴的な苦情事例について紹介します。

1)腐った臭いがした「ところてん」
インターネット苦情者は、インターネットを通じて購入した「ところてん」が常温の宅配便で自宅に届いたことから、自宅でも1ヶ月ほど常温で保管した後に開封したところ、腐った臭いがしたため保健所へ相談に来ました。検査の結果、苦情品の「ところてん」の浸け水から製造の過程で混入したと思われる細菌と酵母が多数認められました(図2)。
この事例は、販売者が低温で保存・流通させるべき製品を常温で流通させた結果、購入者側も常温で保管できるものと思い込んでしまったために発生した事例です。近年、インターネット上の店舗でも食品が多く取り扱われるようになり、購入者も増加しています。しかし、当センターが行った調査では、インターネット上で販売される食品は店頭で販売する場合と異なり、購入時に提供される情報が不十分などの実態も明らかになっています。商品を直接手にとることができない状態で食品を購入する場合は、消費者の側でも食品の性質を理解し、保存方法等についても注意深く確認することが必要です。


図2 腐敗臭がした「ところてん」と原因の1つと考えられた酵母(矢印)

2)激しい口の痺れを感じた「メロン」
 苦情者は、自宅付近の青果店でカットされたアムスメロンを購入し、喫食したところ、舌がしびれるような強い苦味を感じたため、毒物の混入を疑い保健所へ相談に来ました。検査の結果、苦情品の「メロン」は、バラ色カビ病の原因となるトリコセシウムというカビに汚染されていることが判りました(図3)。
バラ色カビ病は、原因となるカビが果実表面の小さな亀裂などから内部に侵入して果肉を腐らせ、その結果、苦味成分が局所的に作られる果物の病気です。また、この病気は水分や糖分の多い果実に多く見られ、特に果皮が薄いアムスメロンなどの品種で多発しています。バラ色カビ病は、外観からは見分けがつけにくいため、気づかずに食べてしまう場合があります。このとき、舌がしびれるような強い苦味が局所的に感じられるため、毒物の混入が疑われる場合があります。
 バラ色カビ病に侵された青果物は、内部(可食部)に変色が見られる場合があります。このような青果物を発見した場合は、喫食せず、最寄りの保健所へ相談してください。


図3 強い苦味を感じた「メロン」と苦味の原因と考えられたカビ(トリコセシウム)

3)異臭を感じた「ウォーターサーバー水」
 苦情品は、インターネットやファックスなどを通じて、購入者の元に定期的に宅配されるナチュラルミネラルウォーターで、ウォーターサーバーに使用するものでした。苦情品は、製造者、採水地、製造期間がともに異なる2つの商品で、どちらも、飲んだ際に異臭と口の中の異変を生じたため、苦情者は保健所へ相談に来ました。検査の結果、どちらの苦情品からも放線菌の一種であるノカルジアという微生物が検出され、異臭原因であることが判りました(図4)。
 近年、ミネラルウォーターの消費量急増に伴い、ウォーターサーバーも広く普及してきています。本事例は、製造段階で混入した放線菌が異臭の原因として疑われた事例ですが、過去には、日常整備を怠ったサーバー内で微生物が繁殖した結果、同様の異臭が発生した事例が報告されています。一見きれいに見えるナチュラルミネラルウォーターの中には、様々な微生物が存在します。これらの中には、室温中で増える微生物もいます。このため、サーバーのメンテナンス(洗浄・消毒・部品交換等)を定期的に行うとともに、購入したボトルの保管について消費者も十分に気をつけるとともに、商品を開封した後は早めの消費を心がけることが必要です。


図4「ウォーターサーバー水」の異臭原因と考えられた放線菌(ノカルジア)の集落



3 微生物による食品危害を防ぐには

 微生物が増えるためには、栄養源と時間、発育に適した温度や湿度などが必要です。したがって、微生物による食品の苦情は、これらの条件が、製造、流通、販売、購入後の保管のいずれかの段階で揃ってしまった場合に発生すると考えられます。微生物による食品への危害を防ぐためには、家庭でどのような点を注意すれば良いのでしょうか? 一般的な注意点を示します。

①購入した食品の保存方法に気をつけましょう
 一般に、食品を乾燥させることで微生物の増殖を防ぐことができます。しかし、ビニールパックに入った乾燥食品などでは、包装内で生じた結露によりカビが発生してしまう場合が見られます。乾燥食品をはじめ、家庭で食品を保存する場合は急激な温度変化が起きないように保管しましょう。また最近では、室温での保存が可能な「レトルト食品」と、これに良く似た包装でありながら冷蔵での保存が必要となる「レトルト類似食品」など、外観だけで判断することが難しい食品が多く出回るようになってきました。包装に印刷された保存方法を良く確認して保存しましょう。

②なるべく早く消費しましょう
 微生物が増殖するためには、一定の時間が必要です。カビについては、通常、肉眼で確認できる大きさになるまでには2〜3日間以上かかります。したがって、調理から食べるまでの時間を短くすることで、食品中で微生物の増殖を防ぐことができます。調理した食品や開封した食品は、なるべく早く消費しましょう。また、作り置きをする場合は冷蔵庫を利用しますが、このとき、詰め込みすぎや熱いまま冷蔵庫に入れるなどして庫内の温度を上昇させないように注意しましょう。さらに、冷蔵庫内で微生物が繁殖することを防ぐために、ビンや缶類を含む食品の保存容器について、外装をきれいにしてから冷蔵庫で保存しましょう。

③異常を感じた食品は食べないようにしましょう
 家庭で気をつけて保存していても、カビが生えてしまう場合があります。カビが生えた食品を食べずに捨ててしまうのはもったいない気もしますが、カビが生えた食品を食べてしまった場合に、症状は重くないものの下痢や嘔吐などの症状を訴える事例が見られます。カビが生えた食品は食べないようにしましょう。また、気づかずに食べてしまった場合など、異常を感じた場合には、最寄りの医療機関や保健所へご相談ください。

<参考となるリンク先>
食品の苦情統計(食品衛生の窓)
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shokuhin/kujou/index.html
東京都健康安全研究センター:くらしの健康第17号
http://www.tokyo-eiken.go.jp/issue/health/17/17.pdf
東京都健康安全研究センター研究年報
http://www.tokyo-eiken.go.jp/issue/journal/2008/pdf/01-22.pdf
東京都健康安全研究センター食品衛生のページ
http://www.tokyo-eiken.go.jp/fscgctr/index2.html