水銀をめぐる健康リスク



水銀をめぐる健康リスク

 水銀は、大気、土壌などの自然環境中では主に無機水銀の形で存在しています。無機水銀は、海や湖沼中に生息する微生物の働きでメチル水銀へと変化します。生成したメチル水銀はプランクトンに取り込まれ、プランクトンは小魚などの餌となり、その小魚はさらに小型魚、大型魚あるいはクジラなどの海洋ほ乳類に次々に捕食されます。この食物連鎖の過程でメチル水銀は徐々に生物濃縮され、マグロ類などの大型魚では、水銀含有量が海水中の濃度に比べて約3,000倍ほど高くなると報告されています。

 魚介類から検出される総水銀量(無機水銀と有機水銀を合計した量) のうち、約70〜100%がメチル水銀です。




 昭和48年に、厚生労働省(当時は厚生省)は魚介類中に含まれる総水銀量の暫定的規制値を0.4 ppmに定め(1ppm=100万分の1)、さらに食品衛生法では検査結果がこの値を超えた場合はメチル水銀についても検査を行い、その値が0.3ppm(水銀として)を超える場合は暫定的規制値を超えた魚介類と判定すると規定しています。この規制値は当時報告されていた数多くの研究論文に基づき、健康に影響を及ぼさないよう、十分な安全率を見込んだ上で決められました。
 昭和48年度以降、福祉保健局(当時は衛生局)では魚介類の水銀含有量調査を行っています。平成16 年度の調査では、築地市場に入荷した123種の魚介類、延べ421試料と市販されている魚介類加工品24試料の計445試料について検査を行いました。その結果、総水銀の平均含有量は0.15ppm でした。このうち106試料についてメチル水銀を検査したところ、その平均含有量は0.28ppmでした。図2に日常的に食される魚介類中の水銀含有量を示しました。
検査結果の詳細については福祉保健局のホームページをご覧ください。
    食品衛生の窓(調査・統計データ)


 それでは、私たちは平均的な食生活をとおして、どれだけの水銀を摂取しているのでしょうか。当センターでは、平均的な食生活による都民の水銀摂取量を知るために、平成17年度から一日摂取量調査(マーケットバスケット方式)を行っています。
 平成17 度の調査では、総水銀が0.179μg/kg体重/日、メチル水銀は0.139μg/kg体重/日で(水銀として)、平成18年度は総水銀が0.190μg/kg体ています。重/日、メチル水銀は0.162μg/kg体重/日でした。
 メチル水銀は胎盤を通過して胎児に移行し、発達過程の中枢神経系に影響を及ぼす可能性があるという報告があり、平成15年に厚生労働省は「妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項」を公表し、さらに、平成17年に内容の一部見直しを行いました。
 見直しに当たり、食品安全委員会(食品のリスク評価を公正かつ科学的に行うために内閣府に設置された機関)は、妊娠中か、その可能性のある人にとって、胎児に影響を与えることなく、十分に許容できるメチル水銀摂取量(耐容一日摂取量)を 0.29μg/kg体重/日(2.0μg/kg体重/週)としていることが確かめられました。
 当センターが行った平成17年度及び平成18年度食品群毎の分析結果からは、総水銀及びメチル水のいずれの調査結果においても、メチル水銀の一銀のいずれも、摂取量の大部分が魚介類に由来し日摂取量は耐容一日摂取量を下回っていました。


図2.魚介類の総水銀含有量
(平成16年度 都内に流通する魚介類等の水銀汚染調査結果より、東京都福祉保健局)

一口メモ:マーケットバスケット方式

マーケットバスケット方式「マーケットバスケット」とは「買い物カゴ」という意味で、通常の食生活で、特定の物質が食事を介してどの程度摂取されているかを、「買い物カゴ」の中身を分析して把握するための調査方法です。国民健康・栄養調査などによる食品摂取量のデータに基づき、食品を米・米加工品類をはじめとして、魚介類などの計14食品群に分類し、通常行われている方法で調理したものを分析します。



先頭へ戻る
I 人と水銀をめぐる歴史
人と水銀の関わり
水銀の種類と毒性
過去に発生した、水銀による健康被害事例
II 水銀をめぐる健康リスクの現状
自然環境における水銀の循環と蓄積
自然環境における水銀のメチル化と食物連鎖
暫定的規制と流通魚介類の水銀含有量調査
厚生労働省による「妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項の見直し」について
III まとめ

本ホームページに関わる著作権は東京都健康安全研究センターに帰属します。
Copyrightc 2003 Tokyo Metropolitan Institute of Public Health. All rights reserved.