身近な水系感染症に気をつけましょう



身近な水系感染症に気をつけましょう
水は私たちの生命の維持や毎日の快適な生活に欠かせません。そうした飲み水や生活用水が、ときとして病原微生物で汚染され、下痢などの病気を起こすことがあります。飲み水やその他の水の利用によって病原微生物に感染して起きる病気のことを「水系感染症」といいます。ここでは水が原因で起こるおそれがある感染症とその防止方法や行政の取組などについて紹介します。

水道局などから直接給水される水道水は、法令によって衛生的に管理することが水道事業者に義務づけられており、50項目にも及ぶ水質基準に適合した安全な飲料水です。水質基準のうち、微生物汚染の指標としては表1に示した項目があります。
表1 微生物汚染を指標する水道水質基準項目
水質基準に関する省令(平成15年厚生労働省令第101号)
水道により供給される水は、次の(中略)基準に適合するものでなければならない。
一般細菌 1mLの検水で形成される集落数が100以下であること。
大腸菌 検出されないこと。
水道水以外の飲み水では、井戸水があります。また行楽などの際に湧水や沢水を口にすることもあります。これらの水には注意が必要です。井戸水や湧水・沢水などは人間を含む動物のふん便などで汚染されやすく、こうした水を飲んで水系感染症にかかる事例がこれまでにも数多く報告されています。

井戸水が汚染された事例
表2 井戸水による集団感染事例
(患者数100人以上の事例)
発生年月 発生地域 発生施設 汚染原因
消毒状況
患者数
(人)
原因細菌
平成元年5月 岐阜県 キャンプ場 動物の糞
消毒装置なし
326 病原大腸菌
平成2年6月 愛知県 飲食店 いけす用井戸水の使用
消毒装置なし
370 アエロモナス
平成2年10月 埼玉県 幼稚園 汚水の流入
消毒装置なし
251 病原大腸菌
平成3年8月 群馬県 従業員食堂 不明
消毒状況不明
326 病原大腸菌
平成4年6月 東京都 仕出し屋 原因不明
消毒装置なし
234 病原大腸菌
平成5年9月 静岡県 飲食店 し尿浄化槽からの汚染
消毒状況不明
191 病原大腸菌
平成5年9月 大阪府 結婚式場 原因不明
消毒装置の不備
1,126 病原大腸菌
平成6年7月 福井県 高校 原因不明
消毒装置不作動
370 カンピロバクター
平成6年9月 富山県 雑居ビル 汚水の流入
消毒状況不明
438 病原大腸菌、ほか
平成7年3月 高知県 飲食店 雨水流入
消毒装置不作動
189 不明
平成10年5月 長崎県 大学 排水の流入
消毒剤なし
821 赤痢菌
飲み水の細菌による集団感染の多くは、家庭や店舗・学校などの井戸水、湧水・沢水が原因で発生しました。なかでも井戸水による事件が半数以上を占めていました。
井戸水による集団感染が起きた原因は、表2に示したように井戸水を消毒しないで飲用していたことでした。

水を汚染する細菌のワースト3
病原大腸菌
(長さ0.002〜0.006mm)
カンピロバクター
(長さ0.0005〜0.005mm)
赤痢菌
(大きさは大腸菌とほぼ同じ)
図1 水系感染の原因となる代表的な細菌の電子顕微鏡写真
飲み水を汚染する細菌で最も多く汚染事故を起こしているのは、様々なタイプの病原大腸菌(57%)で、次いでカンピロバクター(20%)、赤痢菌(7%)などです(図1)。これらの細菌は、塩素などで水をきちんと消毒すれば死滅します。

井戸水、湧水には寄生虫も?
井戸水は、クリプトスポリジウムやジアルジア(図2)という、非常に小さな、塩素消毒ではほとんど死なない寄生虫で汚染されることがあります。
クリプトスポリジウム
(直径約 0.005mm)
ジアルジア
(長さ 0.008〜0.012mm)
図2 クリプトスポリジウムとジアルジアの光学顕微鏡写真
汚染原因は、これらの寄生虫に感染した人や動物のふん便の流入です。野生動物が汚染源となることもあります。
これまでも井戸を水源とする小規模な水道で給水が停止される事件を起こしています。

飲み水からの水系感染を防ぐために
表3 貯水槽を使っている水道の管理基準
★簡易専用水道(貯水槽の容量が10立方メートルを超えるもの)
設置者が水道法・水道法施行規則に基づいて管理する。
  • 水槽の清掃を一年に一回以上定期的に行う。
  • 水の汚染防止措置を講ずる。
  • 蛇口の水の色、濁り、臭い、味その他で異常があった場合は、水質基準の項目のうち必要なものについて検査する。
  • 健康を害するおそれのある場合は直ちに給水を停止し、関係者に周知する。
設置者は1年以内ごとに1回、定期的に検査を受ける。
  • 施設の衛生的な管理状態の検査
  • 蛇口の水の臭気、味、色、濁りの検査
  • 残留塩素の有無の検査
★小規模貯水槽水道(貯水槽の容量が10立方メートル以下のもの)
設置者が東京都条例(※)に基づいて管理する。
貯水量5立方メートルを超える施設の場合は衛生上必要な措置を講じる。
  • 水槽の清掃を一年に一回以上定期的に行う。
  • 施設の管理状況を一年に一回以上定期的に検査する。
  • 水の汚染防止措置を講ずる。
  • 蛇口の水の色、濁り、臭い、味その他で異常があった場合は、水質基準の項目のうち必要なものについて検査する。
貯水量5立方メートル以下の場合は衛生上の措置を講ずるように努める。
東京都小規模貯水槽水道等における安全で衛生的な飲料水の確保に関する条例
アパートやマンションで貯水槽(受水槽や高置水槽)を使っている場合は、貯水槽の容量によって「簡易専用水道」又は「小規模貯水槽水道」等という水道施設となり、貯水槽の設置者が水道法あるいは東京都の条例に従って衛生的に管理しなければなりません(表3)。水がおかしいな?と思ったら保健所に相談してください。
井戸を使う場合は消毒し、定期的に保健所や検査機関で水質検査を受けましょう。
湧水や沢水は、たとえ名水でも飲用できるかよく注意しましょう。


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